相楽景の名義を使って、勝手に広まる格闘大会のチラシにこめかみを押さえて、誰が広めたのかと道場に集まっているお友達を見詰める。
そもそも、です。
私は無関係の筈でしたよね。
何故、私が主催したようにお触れを出しているんですか。津南さん、私に何か恨みでもあるんで……二人での自爆特攻を止めましたね。
しかし、アレは貴方も理解してくれた。
「(まさか、していなかった?)」
グルグルと余計な事を考えていると、神谷道場の正門を叩く音に気付き、そうっと緋村剣心達を見遣るも、ささっと視線が逸れました。
この家の家主ですよね?
渋々と私と左之助さんで正門を開けると、見覚えのある巨体の男の人がいた。
「我輩の到来である!!」
「石動殿、お久し振りでござる」
石動雷十太。
真古流剣術の開祖。
───正確には現存する古流剣術の書物を読み解き、その術理を取り込み、自己流の剣術へと昇華し、伝える剣客です。
現在は塚山君の支援を受けながら、日本諸国を巡って滅びの憂き目に遇う剣術剣道の道場に赴き、その術理を後世に伝えるため、自ら学び、高め、真古流の技に加えているそうです。
正しく、武芸百般。
すでに百を越える流派を縒り集め、強靭な縄のごとく加えて極めた人間であり、愛弟子・塚山君のために殺人刀の行く末を変えてしまった仁義ある御方です。
「此度の話は由太郎に聞いている!!竹刀や木刀大いに結構、貴殿と相見える機会を得たこの僥倖に、我輩の全身全霊をぶつける!!」
「……承知したでござるよ、石動殿」
承知しちゃうんですね。
そう思いながら緋村剣心と石動雷十太を見て、左之助さんを見上げると「折角なら和尚や張も呼んでみるか」なんてことを呟いています。
「糸色殿、お主の計らい。感謝である!」
「い、いえ、あれは私じゃ」
「さらば!!!」
「あれは、私じゃないんです」
そんな私の呟きは石動雷十太には聞こえていないのか、ズカズカと大きな身体を律し、悠然と歩いていく後ろ姿を見送ることしか出来ませんでした。
「……柏崎さん、御庭番衆もですか?」
「うむ、蒼紫達も鍛え直しておるな」
どうやら逃げ道はないらしく、私はドクトル・バタフライにまた相談して、使える場所を確保し、安全面に配慮した闘技場を作らないといけないようです。
「景も出るか?」
「私に死ねと言うんですか?」
「左之、糸色殿は武術は嗜んでいないでござるよ。姿殿なら出てくれるでござろうが」
「お兄様をお呼びになるんですか?」
「飛天の技か」
お互いに異なる奥義ですからね。