陸奥天兵と戦う剣路君。
普通の竹刀でも使い方誤る、又は殺す気持ちで打てば確実に相手に致命傷を与えてしまう。けれど、剣路君の目の前に立つのは若き修羅です。
緋村剣心と薫さんの血を引いている剣路君でも致命傷は愚か竹刀を当てることすら儘ならない。それでもしとりの視線は剣路君に向いている。
「どうした、当たってないぞ」
「チッ!」
神谷活心流は三種の太刀。
面打ち。籠手打ち。胴打ち。基本はこの三つを学び、中伝、奥伝お進めば活心流特有の剣技を学ぶ機会を得る。ですが、まだ剣路君は初伝の位────。
修羅と戦うには手札が少なすぎる。
「ッゼヤァー!!」
右薙ぎ。
左一文字とも呼ぶ胴打ちを繰り出す刹那、剣路君の手首は緩み、不規則に太刀筋はズレて、天兵君の胴着を切っ先が掠める。
油断していた天兵君も流石にお腹を擦り当てた竹刀に舌打ちし、ようやく構えた。しかし、それは修羅の戦闘ということになります。
「へぇ、当てるのかよ」
「陸奥さん、いつの間に?」
「今さっきだ。抜刀斎の子供にしては太刀筋が真っ直ぐで驚いたが、確かに真っ直ぐになるわけだ。あの坊主の前に居るのは天兵じゃねえな」
その言葉に可愛く小首を傾げているしとりも、だんだんと見えてきたようです。陸奥天兵の軽やかな体捌きは何処と無く、しとりに似ている。
剣路君は、あの陸奥を仮想敵として扱い、彼の目の前に居るのは「しとり」です。摺り足と引き足を巧みに使い、円を描く。
しとりの動きに似ている。
しかし、動きが似ているだけで拳打や蹴り技を繰り出す天兵君はしとりとは違います。
「面ッ!!」
「見えてるんだよ、剣路」
真っ向斬り。唐竹割りとも言う脳天から正中線に添って身体を切り裂く基本技を後ろに退いて避けた天兵君の足元から、掬い上げるように竹刀が跳ねた。
「上手いな、切り返しの技か」
「今のは龍翔閃ですね」
「抜刀斎の技だったか?」
陸奥出海の呟きを肯定し、修羅に一打を与えた剣路君は不敵な笑みを浮かべ、しとりの方を見ながら「オレはまだまだ強くなってやる。だから、しとりはオレ以外に負けないでくれ」と言った。
大胆な告白です。
しとりは自分より強い人が好きだと言っていたので、ひょっとしたら剣路君は本当にしとりを上回るかも知れません。
「横恋慕は失敗だったな、天兵」
「……元から望みは薄かっただけだ。しとりの目は、アイツだけを視てるみたいだしな」
そう言うと天兵君と陸奥出海は闘技場を出ていってしまいました。もう帰るのでしょうか?思いつつ、戦いを避けないのでまた来ますね。