藪連田蔓茨の振るう長剣の間合いを目測と経験を頼りに紙一重で躱す石動雷十太。
真古流「飯綱」は真空を切り裂く鎌鼬現象を剣技に昇華した奥義。石動雷十太はそれを「纏い」と「飛び」の二種類に分けている。
「ヌゥンッ!!」
藪連田蔓茨の振るう腕の延長線じみた長剣を往なし、轟音を響かせ、間合いを詰め、長剣の内側に踏み込んだ石動雷十太を狙い、藪連田蔓茨の右足は地を這い上がり、三本目の剣閃が彼の身体を間合いの外へとまた押し出す。
「両手のみならず、両足も武具か」
「流石に片足長しじゃ不利か」
左足の四本目の剣が伸びる。
藪連田蔓茨の戦闘形態は、海外に存在する長身痩躯の怪異「スレンダーマン」に酷似し、伸びる両手両足の剣閃は手首に仕込んだ仕掛けによって段階的に長さを伸縮する事もでき、完全に間合いを見切る事は難しい。
「左之助、戦況の有利は?」
「雷十太だな。間合いに踏み込めちゃいねえが、真古流の技をまだ使ってねえ……それにアレを使うなら普通は上段中段に刀を構える」
「左之助さんのご指摘通りですね」
私達の会話を聞く人は何人かいますが、闘技場に立つ二人には聴こえていないようです。
石動雷十太は緩やかな脇構えのまま立ち、ジリジリと間合いに踏み込み、振るわれる四剣による怒濤の剣閃を全て弾き、捌き、往なし、受け流す。
「ヌェアッ!!」
「ぬぐおっ!?」
ギャギィンッ…!!
藪連田蔓茨の右腕の長剣を巻き込み、真上に弾き、片側に隙を作った石動雷十太は身体を捻り、ゴルフのスイングショットの様に大刀を釣り上げる。
「昇り飯綱ァ!!!」
業風を巻き上げ、砂塵を切り裂き、地を這う飯綱が軌道を変化させ、鎌鼬は地を昇り、長剣両足の上に立つ藪連田蔓茨の身体を裂く───。
「っぶねえぇ…!」
しかし、相手はあの剣客兵器────。
左手と左足の長剣を折り畳み、手甲や脛当の具足として長剣を使用し、「昇り飯綱」を防ぐ。───ですが、左手左足の長剣は粉々に砕けてしまった。
藪連田蔓茨は左半身を失った。
「チッ。飛ぶ剣戟なんて聞いたこと無いぞ」
そう彼は不満をぼやき、左半身の砕けた長剣を外し、右腕の長剣を左足に付け替える。両足を主軸に攻撃を繰り出すつもりのようですね。
「剣心も蒼紫も使えるよな?」
「俺の場合は圧し斬り、放つ。緋村のモノは速すぎる故に出てしまうだけだ」
そういう奥義みたいなことをお話しするのはやめてもらえますか?と苦笑を浮かべつつ、まだまだ終わりそうにない仕合を私達は見つめる。