藪連田蔓茨は鍬形虫の様に両腕の長剣を真っ直ぐ剣先を石動雷十太に突きつけるように構え、両腕を開くと同時に剣身はしのぎを削り、火花を散らす。
「ルォアッ!!」
「ヌゥンッ!!」
黒縄の円を描くほど發条の如くしなる二本の剣腕を揃えた藪連田蔓茨の横薙ぎを石動雷十太は肩と上腕骨に大刀を重ねて、力み、受け止める。
ザリザリと足袋と草履が地面を削り、しなる剣身は受けた部位を基点に剣身を歪め、石動雷十太の背中に斜めに切り裂き、彼の背中に「二の字」の傷が刻まれる。
「変幻自在の發条の太刀筋、見事である!!」
背中に傷を負って尚も剣を捨てず、それどころか石動雷十太の闘志は更に燃え滾る。大刀を握る手は力み、脇構えを解き、正眼に構え直した大刀を頭上に掲げ、間合いの外にて大刀を背負う。
己の背面に添うほど大刀を引き絞る。
「これが真古流の飯綱だァ!!!」
「がら空きなんだよ、爺!!」
その咆哮を遮るように両腕を交差するように大刀を受け止めようと剣腕を振るう藪連田蔓茨。ですが、その剣腕を斬り砕き、地面にハバキまで埋まるほど力強く素早く鋭く大刀を振り下ろす石動雷十太────。
「ば、か…がァ…ッ……!」
音が、遅れてやって来た。
地面を裂いて、空を斬りて、藪連田蔓茨の身体に強烈すぎる鎌鼬の業風は叩き込まれ、鎖帷子や具足を着込んでいなければ、おそらく藪連田蔓茨の身体は「飯綱」によって両断されていましたね。
「(乱気流……いえ、真空圧を押し戻す際に生じる引力を利用した、原理的に言えばミキサーに近しい、剣圧が一太刀の中で乱回転する剣技でしょうか?)」
「俺の相手はあの男か」
「もう勝ったつもりなのかよ」
「抜刀斎を倒すまで俺は負けるつもりはない」
四乃森蒼紫の言葉に左之助さんは笑みを浮かべつつ、石動雷十太を見下ろしている。私を挟んで喧嘩したり口論するのはやめてほしいんですけど。
「此度は吾輩の勝ちである!だが、また仕合おうぞ。藪連田蔓茨よ、お主は良き剣客であった!!」
「…………うるせぇよ、ぼけ」
のっそりと身体を引きずり起こした藪連田蔓茨は鮮血に染まった身体を揺らして、ズルズルと私達の方へとやって来ました。
「御方様、負けてしまい。申し訳ありません」
「……いえ、貴方は良く戦ってくれました。今は傷を癒やして、長く私達を支えてください」
「御意に」
私の立場でやることではないんですよね。
ただの物書きなのに殿様扱いは違います。
「第一仕合。勝者、石動雷十太!!」
「吾輩である!!」