第二仕合のために会場を変更する。
ひみつ道具「空間入れ換え機」によって闘技場の砂場は畳の上に変わります。室内形式に見えますが、天井や壁は無く砂場を畳に変更しただけです。
「他にもあるのか?」
「川や海、森にも出来ますけど。この闘技場でそれは難しいですから綺麗な立地を選んではいます」
左之助さんの問いに答えつつ、差し出されたお饅頭を口で受け止める。練った栗と漉し餡がとても美味しくて、私は好きです。
しかし、危険な場所もある。
空間を切り替える以上、その場所に人も存在している可能性もありましたので、今回は我が家の大広間の一部を切り替えて、此方に用意しました。
「弥彦が居たから聞けなかったけどよ。その大文字流格闘茶道って言うのは、どういうもんなんだ?抹茶で攻撃するのか?」
「分かりやすく言えば作法を突き詰めた流儀です。例えば正座して、動けます」
「妖怪じゃねえか」
「どちらかと言えば摺り足です。爪先の親指と人差し指を動かして移動する所作、極めれば天井の梁に張り付いて動けることもあるそうですよ」
「やっぱり妖怪じゃねえか」
私の言葉に左之助さんは正座して動けるのかを試していますけど。そう簡単に出来るのなら茶道や華道を学んでいた私にも出来ますよ、私は無理でしたけど。
そもそも原理は御式内です。
座して捕り、極める。
正座という構え。
日本の格闘技に於いて、最も多く存在する最初の工程は正座して演武を見学し、基礎稽古を重ねて、部位稽古を重ねて、やがて全身の鍛練に到る。
「(問題は、柔術と剣術ということです)」
「ひー、できた!」
「ひーちゃん、それ違うよ?」
爪先の力を利用して跳ねるひとえの姿に天内悠の姿を想像してしまう。こ、このままでは「バランスの悪いひとえ」とか酷いことを言われてしまうかもしれません!
そ、そんなことは許しませんよ!
「ひーちゃん、こうだよ」
「こーお?」
「ん!ひーちゃん、偉い!」
「んぇへへ♪︎」
ワシャワシャとしとりに頭を撫でて貰っているひとえは嬉しそうに笑い、私と左之助さんも姉妹の仲良しさに微笑ましく見守っていたそのとき、大文字の家紋を刻んだ茶杓が飛んできました。
「(お母様に格闘茶道で負けた屈辱を、まさかしとりで晴らそうとしているの?)」
それにしては、狙った相手は私すぎます。
いえ、もしかして私を仕合の選手だと勘違いしているのでしょうか?と首を傾げつつ、ゆっくりと茶杓を手にとって見つめる。
「本戦にて待つ」
「あの女、景が戦えると勘違いしたのか」
たぶん、そうなりますね。