圓明流の方々は自己最強を誇る人も居ますが、今回は見物に徹するそうです。天兵君は出場するけれど。あくまで、それは現当主として。
「第二仕合まで数分を切りましたね」
「そうだな」
「明神君の準備は大丈夫でしょうか」
「燕と薫が手伝ってるんだ。大丈夫だろ」
それは、そうですけど。
左之助さんより年齢も近くて、ずっと強くなるために努力していた男の人を応援したいと思うのは当然では?と考えつつ、しとりとひとえを見ます。
二人にとって明神君は先生です。
ゆっくりと闘技場の畳に足袋のみで上がった明神君は正座し、大文字流の家元───大文字煎子(おそらく『らんま1/2』に登場する「大文字煎太郎」の祖母ご本人)も派手さを纏わぬ着物姿のまま座す。
緩やかに明神君に御辞儀を行い、お互いに視線を交わす。淑やかに茶杓と茶筅を使い、雅な茶碗でお茶を点てる大文字煎子の姿は優美です。
「どういう戦いなんだ」
「阿呆が。戦う前に茶を交わしているだけだ」
「(痺れ薬ではありませんね)」
私の「特典」の「料理のスキル」のおかげで、普通のお茶だと判明しているため、問題はありません。毒薬を使えば即座に止める準備は出来ています。
「しかし、新津覚之進の茶碗を選ぶなんて優れた目利き、流石は格闘茶道の家元ですね」
「お前もそっち側なのか」
華道、茶道、雅楽、舞踊、そういう芸能は名家の娘として良く学びました。もっとも咳き込んだり苦しんだりしてしまうので長くは出来ません。
───けれど。良し悪しは分かります。
お茶を飲み終えた明神君はゆっくりと茶碗を畳に置き、左手を木刀に向ける。大文字煎子は身構えず、茶器を纏めて回収し、お互いに門の近くへと戻る。
まだ、名乗り口上もしていないのに始めるわけにもいきませんので、操さんに視線を向けると親指を突き立て、ピコピコしていました。
やめてください、はしたないですよっ。
「操には後で言い聞かせておく」
そう溜め息を吐く四乃森蒼紫に苦笑を浮かべつつ、いつまでも笑顔の絶えないのは良いことだと励ますと「そう言ってもらえると助かる」と返される。
「左之助さん、勝ちますよね?」
「勝つだろ。弥彦は強い」
彼の言葉に四乃森蒼紫も肯定し、私は操さんに視線を送って青龍と白虎の方角に分かれ、観客席の埋まりと選手の到着を待ってる。
強すぎる故に手段の無い人もいますが、明神君なら無事に勝つと左之助さんは言ってくれましたし。みんなもそう思っている。
ただ、格闘茶道は座して戦うため、剣の間合いを低くしないといけません。