柄杓の伸縮を利用した高速の突き。
引きと突きを正確に見極め、木刀で突きを払い、往なし、捌く。袱紗の絡め技も近付かなければ使えず、明神君も見えない技を警戒し、間合いの外で受け、タイミングを測っている。
観客の人達は白熱していく剣撃の応酬(木刀と柄杓)に興奮し、しとりも木刀の捌き方を見つめて、しっかりと覚え込み続けています。
「糸色、この戦いはどう見る」
「(……さっきから気になっていたんですけど。どうして、みんなは私に意見を聞こうとしているのでしょう。貴方達の方が私より詳しいですよね?)」
そう疑問に思いながらも戦局を熟考し、幾つか脳内で攻防の行く末は見えますけど。あくまで推測と予測でしかありません。
「景、教えてやれよ」
「……私よりしとりが分かっていますよ。ね?」
「ん、次の突きを弥彦センセは下段に弾いて、柄杓を踏んで折る」
しとりの言葉と重なるように明神君は動き、走る。
「走って攻める。折れた柄杓はお姉さんの手元に戻るけど、突きを避けての弥彦センセの回転斬りがお姉さんの背中に当たって終わり」
まるで、しとりの言葉の通りに動いているかのように二人の最後の攻防は始まり、大文字煎子は折れた柄杓を突き出すも、明神君は身体をひねり、飛天御剣流の「龍巻閃」めいた動きで彼女の背中を撃ち、意識を刈った。
「良かったな、剣心」
「いやあ、良かったのでござろうか」
緋村剣心さメラメラと決め手を他流派に変えた事に怒る薫さんを想像しているのでしょうが、薫さんは自分の弟子の成長を素直に喜べる素敵な女性ですよ。
「…………あ、しょ、勝者、明神弥彦!」
「ありがとうございました」
ゆっくりと一礼した明神君は大文字煎子に視線を向け、少し離れた位置に座り直し、ぐったりと目を閉じて気を失っている彼女を見据えています。
「優しいですね、明神君」
「下手に動かすより恵や蝶野のオッサンが来るまで近くで守っているな」
「薫殿の指導の賜物でござるなあ」
しかし、燕さんに嫉妬されないのでしょうか?と首を傾げていますが、二人は相思相愛のおしどり夫婦なので浮気なんて絶対にしませんね。
───とは言えです。
明神君の強さに緋村剣心は感慨深さを感じ、仕合を勝ち抜いた明神君も大文字煎子の安否確認を終えて、ようやく控えに戻りました。
第三仕合、第四仕合は翌日です。
勝ち抜き戦ではなく、あくまで仕合を組むのは主催者ということになっている私です。こういうことを押し付けるのは本当にやめてほしいです。
悪役扱いも黒幕扱いもイヤです。