真夜中、左之助さんにまたチャフを仕掛けるドクトル・バタフライを訝しげに見つつ、居間の方に向かい、ティーポットをモヂカラで温め、紅茶を差し出す。
「ありがとう。糸色君」
「そう思うなら真夜中に訪ねて来るのはやめてほしいです。左之助さんに申し訳なく思いますし。あと来る度に金色の蝶を飛ばすのは、どうなんですか」
「HAHAHA」
「笑って誤魔化しましたね」
湯呑みに注いだほうじ茶を飲み、ドクトル・バタフライに視線を向けます。「天挑五輪大武會」の事もそうでしょうが、此処にやって来た理由も問う。
「率直に言おう。新しく『物語』が加わった事が判明したと同時にどうにも変わった気配が多く日本各地どころか世界中に広がった気がするのだよ」
「……私に判断して欲しいわけですね」
「うむ」
そう言って話し出すドクトル・バタフライの単語を聞きつつ、「前世の記憶の保持」の抑圧・制御の術式の一つを解除する。
向こう側の私と『物語を繋げる能力』を共有している影響なのか。以前より「前世の記憶の保持」に関する制御の方法は簡易化し、現在は「地球の本棚」のように閲覧する事は出来るようになっています。
「キーワードは『学生』『異能』『魔女』だ」
「ヒットしたのは『魔法少女まどか☆マギカ』と『カードキャプターさくら』など魔法少女系統のモノですけど。あっていますか?」
「ふむ、なら『刀』を加えてくれたまえ」
その言葉を聞くと百冊ほど存在していた「物語」は減り、「青の祓魔師」や「ハイスクールD×D」などバトル系統のモノに変化していく。
「では、年代は?」
「明治だ」
「……有りました。『岩元先輩ノ推薦』ですね。まだ白紙の部分もありますから、現存し進行する『物語』も加わってしまうようですね」
私は眼鏡のレンズを拭きながらドクトル・バタフライに「前世の記憶の保持」の抑圧・制御の術式を再施錠してもらい、彼に視線を戻す。
「君の居なくなった後に始まる物語となると、対策の方法も個人的に思案しなくてはいけないのか。やはり、人外にならないかね?」
「なりません」
私は私のまま生きて、死ぬんです。
「1910年ということは、しとりも大人で『ゴールデンカムイ』も終わっていますね。……となると、私の孫の誰かが出るのでしょうか?」
「糸色君の孫か…黒幕さは変わらなそうだ」
「し、失礼ですね。しとりとひとえに似てソーキュートな子供達に決まっているじゃないですか。というより、観客席にいた男の子、蝶野爆爵ですよね」
「如何にもそうだが?」
「ホムンクルスの事は教えているんですか?」
「あと数年後に教えるつもりさ」