「今度は此方から行くぞ」
「ハッハァーッ!!良いぜ、来いよ!」
空手で言えば前羽の構え。
受け手に適した構えを取る戌亥番神の間合いに踏み込み、右手の小太刀を無造作且つ無動のまま振り抜き、手のひらを裂く。
───いえ、戌亥番神が刀身を逸らした。
太刀筋に逆らわず、受け流す。原理としてはスリッピングアウェーに近しく、戌亥番神はその衝撃を逃さず、勢いを乗せて回転し、豪快な裏拳を見舞う。
「ヂィッ!…見えてたのかッッ」
「そうでなければ頭領は務まらん」
「ハッ!言えてらァ!!」
が、攻撃を予測し読んでいた四乃森蒼紫の左手の小太刀に裏拳は突き刺さり、血が舞う。突き刺さった小太刀も抜かず、左腕一本と両足を駆使した打撃戦に持ち込み、お互いに退かず、避けて、斬り、殴り、蹴り、捌く。
「ウラウラウラァ!!」
「吠えるな、騒々しい!」
至近距離。
「ガフッ……」
「陰陽交叉…!」
「ぐがぁっ!?」
戌亥番神の顎を蹴り上げ、刺さる小太刀を斬って抜き、四乃森蒼紫の小太刀二刀による刀背打ち───御庭番式小太刀二刀流「陰陽交叉」が、蹴りによって口内を切り、血を吹き出す戌亥番神の頭蓋を粉砕した。
「イデェ!!頭が割れるかと思ったぞゴルァ!」
「実際に割れてるわよ、アンタ」
「あァ!?……マジじゃねえか」
「普通は死ぬわよ、蒼紫様の技なのに」
操さんの指摘に怒鳴るも、ベタベタと自分の頭を触ってビックリしている戌亥番神。私の知っている彼よりタフネスと頑丈さに変化がある。
「そりゃあそうだろうぜ。あの野郎は二重の極みを五十か六十受けてもピンピンする硬さだ」
左之助さんの言葉に感心し、視線を向ける。
格子を駆け上がり、三次元的な動き。
人身を翻し、遠心力を加えた強烈な踵落とし。
四乃森蒼紫はその踵落としを受けず、空を掠め、前転めいた姿勢になる戌亥番神の二発目の蹴りを避け、地面に仰向けに寝転がる彼を見下ろした。
流石、長革靴の性質を理解している。
通常の長靴と違い、彼の靴は鉄板を仕込み、斬撃対策と打撃面の威力増強を兼ねています。
「ハッ!!」
打撃戦のメインは両腕両拳。
刻み突き。刻み突き。
腕刀。肘打ち。
最短距離を打つ、縦拳の猛打を四乃森蒼紫は小太刀を宙に放り投げ、手の甲と手のひらを駆使し、最速最短を貫く打撃の嵐を捌き、弾く。
「惚惚する強さだなァ!」
「貴様の使う拳打、以前に戦った大陸の男と似ているな。糸色の言っていた…翻子拳だったか?」
「(どちらかと言えば詠春拳の沖拳、横拳の分類だと思いますね。あと私の名前を出したら、変に勘違いされるので止めて下さい)」
落ちてきた小太刀を掴み、腹部を蹴りと同時に戌亥番神の胴体に斜め十字の刀傷を刻み、間合いを取ると四乃森蒼紫は伝家の宝刀を抜いた。
回天剣舞。
通常小太刀片手による三回転の斬撃でしたが、二刀流によって破壊力と数を増した斬撃───御庭番式小太刀二刀流奥義「回天剣舞」。
その奥義は、六連斬撃です。
四乃森蒼紫は緩やかに歩み、風が薙ぐ。
「────ッ、六連じゃねえ!?」
戌亥番神の言葉が風に混ざる。
「回天剣舞には、まだ更に先が在る」
小太刀一刀流は三回転の三連斬撃。
小太刀二刀流は三回転の六連斬撃。
───
北海道にて九頭龍閃を多用した緋村剣心と同じ。
左回天の三回、右回天の四回。
「流水転じて、激流と成す。蒼紫様は緋村殿を倒すために更なる強さを手にしたのです」
「般若さん、今日は
……しかし、あの速さは間違いなく神速ですね。
「……あ、第三仕合。勝者、四乃森蒼紫!」
その宣言に会場は沸き立つ。
どちらも強く速く見応えがあると観客席は判断したのでしょうね。ですが、四乃森蒼紫はまだまだ自分が強くなることに満足していない。