「認めん!認めんぞおぉぉ!!!」
ハカイタは目を覚ますなり怒りに任せて、しとりに向かっていく。しかし、ハカイタの顔面に左之助さんの二重の極みはめり込み、今度こそ意識を断った。
「マスター・シャーフー、此方の拳士はお任せします。できればなのですが、臨獣拳だからと殺さずに諭してあげてほしいです」
「ん、お願いね。ねこちゃん」
「命を尊ぶ美徳じゃのう」
私としとりのお願いにマスター・シャーフーは了承してくれましたけど。他の拳聖が了承してくれるのかは謎ですし、悩ましいことばかりです。
だれも悪くはないんです。
ちょっとだけ不安になるんですよね。
強さもそうですけど、しとりの美徳は優しさです。自分を殺そうとする相手も慈しみ、意識を断つ技を用いて静かに切り伏せてしまう。
不殺の剣は少しずつ、広まっていますね。
緋村剣心もその事に気付いていて、とても安心したよう剣路君としとりに微笑みを向けています。
「次は誰と誰だ?」
「明後日、次は凍座白也と志葉様です」
そう言うと「おお、遂に儂の手番か!!」と凍座白也は嬉しそうに笑い、名前も顔も隠して参加していたのに露見していたことにビックリする志葉様を見る。
襟首の家紋も隠しましょうね。
「火の剣士殿が相手か!!」
「立端の有る相手だな。まあ、良しとしよう」
「殿、お戯れは」
「池波、お前も諄いぞ。これは次代の真剣者に必要な指南役を探すためでもある。いつまでも初恋を拗らせず、お前も前を向け」
初恋を拗らせる?
池波君は結婚したと聞きましたけど。
「景は関係ないからな」
「え、でも」
「な?」
ワシャワシャと頭を乱暴に撫でられ、困惑する私に「お前は気にしなくていいんだよ」と追い打ちで言われてしまいました。
なにかあるのかしら?と思う。
「ん、母様はわたしの」
「あらあら」
「ひーのだよ!」
「お前らまとめてオレのだろう」
左之助さんの言葉に顔を赤らめていると、池波君の悔しそうな顔が見えた。……やっぱり、まだ気にしているのだろうかと考えてしまう。
偉そうに高説を話したりは出来ませんが、池波君は結婚しているのに、まだ初恋を忘れられないのはダメだと思います。
いえ、初恋は大事ですけど。
引きずってしまうのはだめです。
「ん!わたしが勝ったから今日は母様と寝る!父様はひーちゃんと寝てね!」
「……まあ、今日だけなら良いか」
「ひーはとーさまも好きだよ?」
「おう」
私ににっこりと笑顔を向けてくれるしとりは、とても可愛くて可愛くて、ソーキュートです。