凍座白也と志葉様の相性は相互不利です。
火と水。炎と氷。
どちらも後手に回ってしまえば一瞬で終わってもおかしくない能力です。凍座白也の戦型「不動凍奴」は、分かりやすく言えば死後硬直───。
脳さえも凍らせる狂気の沙汰です。
「使うのは、おそらくシンケンマルでしょうが、人前でモヂカラを使いますかね?」
「さあな」
「ひゃっ!?……さ、左之助さん、真後ろに立たないで下さいよ、もうっ」
「話しかけたのに気付かなかったのは景なんだがな。で、殿様と白也の仕合だったな。お前はどうするんだ?」
「私、ですか?」
「仮にも白也の上司だ。殿様は仕事仲間だろ」
「……白也はお父様の部下ですし、志葉様は仕事仲間というより技術提供先ですけど。そう、ですね。どちらも強いですけど。多分、勝つのは志葉様です」
「珍しく言い切るな。理由は?」
「戦型の有無です。凍座さんは攻撃を敢えて受ける悪癖を持っているのは左之助さんも北海道で見ていたと思います」
そう言うと九頭龍閃を受ける凍座白也の事を左之助さんも思い出してくれたようです。更に言えば「不動凍奴」は血流を止めるため、酸素の届かなくなった脳は機能に多大な負荷を掛けてしまう。
下手をすれば脳は壊死します。
「あいつ、馬鹿なのか?」
「左之助さんも玉砕特攻、不破さんにしましたよね。あのとき、すごく怖かったんですよ?」
「……わるいな、ここ来るか?」
本棚に白紙の本を戻していると、両腕を広げて構える左之助さんが居ました。……左之助さんは、ずるい人だと私は思います。
恐る恐る、左之助さんの腕の中に収まる。
やっぱり、定位置に収まると安心感はありますね。普段はお母さんとしての威厳も必要なので、ちょっとだけ甘えないようにしていました。
だけど、好きなものは大好きです。
「ん!母様、お団子買ってきた!」
「っ、し、しとりが来ますから」
「見られても恥ずかしくねえだろ。単なる抱擁だ」
それは、そうですけど。
「ん!ここにいた!……父様、また母様にひどいことしてるの?わたしも怒るよ?」
私のためにしとりと左之助さんが喧嘩するのはだめです。しとりは私のかわいくてかわいくて仕方ない。私の愛娘なんです。
ひとえだって、そうです。
あの子はまた、どこかに行っていますけど。流石にもう変なものは拾ってこないはずです。いえ、拾ってきても構わないんですが、生きているんですよね。
「ん!わたしと変わって!」
「ダメだ。景はオレの女房だ」
「わたしの母様だよ!!」
どっちも正解ですね。