左之助さんと仕合をするのは、おそらく私の身柄を狙っている組織です。錬金術師というわけではありませんが、そちら側の雇った人です。
相手の格闘技は不明。隠しているわけではなく、本当に未知の相手であり、左之助さんも強さの分からない相手に悩むかも知れませんけれど。
左之助さん自身もかなり有名。
ですが、あくまで有名なのは素手の喧嘩による戦い。日本最強の喧嘩屋、その情報に頼りきっている可能性もあるので警戒は必要不可欠です。
「景はまた考え事してたのか」
「そこまで深くは考えていませんよ」
「そうか?」
「そうです。なので、抱っこする必要もないですから、降ろしてほしいです」
「ダメだな」
なぜ?と困惑する私を無視して、私の事を抱っこしたまま座り込み、私の頭を撫でてお腹と胸の間に顔を埋めるように身体を傾けています。
よしよしと頭を優しく撫でてあげますけど。
なにかイヤなことでもあったんでしょうか?と首をかしげ、左之助さんが滅入るのは珍しく心配していると、左之助さんの手が動き、抱き締め方が横から縦になりました。
「左之助さん、くるしいですっ」
「っ、ああ、悪い」
腕の力を緩めてくれる左之助さんに、ほうっとしながら「楽しみなのは分かりますけど。もうちょっとだけ節操を持ちましょうね?」と伝える。
「……なにかあったんですか?」
「オッサンに聞いたぞ。この大会、オレが寂しくないように開こうって決めたらしいな」
「…………はい、そうです」
「正直、ムカついた」
「え」
「お前、オレが喧嘩できれば良いと思ってるだろ」
「違うんですか」
「違う。オレはお前と一緒に居たいんだよ」
そう言うと私の身体をまた強く抱き締める左之助さんに戸惑いつつ、よしよしと彼の頭を優しく撫でてあげ、ゆっくりと抱き締める。
私だって、ずっと一緒にいたいです。
けど、そう簡単には出来ませんので、少しずつ想い出を遺していきましょう。左之助さんが、寂しくないようにいっぱい想い出を作ります。
絶対なんて、ありませんけど。
絶対に、いっぱい仲良くしましょう。
「……終わったらよ、また何処かの国に行こうぜ。もしかしたら治す手懸かりが見つかるかもしれねえ」
「フフ、旅行ですか。楽しそうですねえ」
けど、酔うんですよね。どこでもドアでダイナミック不法入国してしまうのは、アレですし。もうちょっとだけ考えないとダメですよね。
酔わない乗り物、ドクトル・バタフライのチャフに乗っているときは酔いませんでしたね。いえ、あれは乗り物ではありませんね。