「父様、父様」
「景と同じ呼び方だな。どうした?」
「ん、蛮竜が次の仕合に出るつもりで妖気出てる」
「マジかよ。妖気って漏れるのか」
大広間に向かっていくしとりと左之助さんの姿を見送り、ひとえと一緒にお裁縫の練習をしていると、ひとえもソワソワとし始めてしまい、「着いていっていいですよ」と言ってあげます。
あとはお裁縫を覚えるだけなんですが、やっぱり姉妹なので気になるものもそっくりです。ただ、料理もお裁縫も積み重ねて覚えるものなんですけれど。
しとりもひとえも見せると簡単に覚えてしまいます。我が家の姉妹は本当に頑張り屋さんで、お母さんは鼻高々になって天狗になりそう。
本当に、鼻が伸びてるわけではありませんよ?
「糸色殿、少し良いでござるか」
「緋村さん?」
ひょっこりと現れた緋村剣心に首を傾げつつ、湯呑みにお茶を注ぎ、お茶菓子のお饅頭を差し出す。今日は栗とこし餡で作った栗饅頭です。
「いただくでござる。……糸色殿、折り入って相談なのでござるが、兵枠に拙者を置くのはやめてほしいのでござるよ」
「ダメですね。全員の総意ですし、なにより皆さんは人斬り抜刀斎ではなく、緋村剣心という剣客に勝つために頑張っています」
「……拙者はそんな大層な人間では」
「みんな、あなたの持つ最強の称号がほしいわけではありませんよ。あなたという人間を知りたくて、あるいは自分はどこまで迫れるのかを知りたいんです」
そう言うと緋村剣心は黙って「左之は拙者に勝っているでござるよ?」と言ってくる彼の言葉に肯定するように私も頷きます。
「知っていますよ。だから、左之助さんも実は待ち受ける側だったんですけど……あの人が待ち受ける側に回りたいとは思えませんでしたから」
「左之らしいでござるな」
「フフ、そうでしょう」
「……楽しそうに話してやがるな。おい」
「浮気ではありませんよ?」
「それは知ってる」
しとりとひとえを抱き抱えた左之助さんが居間に戻ってきて、私と緋村剣心の間に割り込むように座り、ムスッとしています。
私もそうですけど。
左之助さんもジェラシーですね。
「蛮竜はどうでしたか?」
「妖気を使わねえなら、まあ」
本当は素手で戦いたかった左之助さんは、ちょっとだけ残念そうに感じました。やっぱり、喧嘩は素手という矜持があるのでしょうか?
「ん、剣心来てた」
「久しぶりでござるな。昨日ぶりでござる」
「あい!おじちゃんもげんきそうれ」
「おじちゃん、おろぉ」
あ、それは傷つくんですね。
まあ、当然ですけど。