「るろうに剣心」の北海道編は明治十六年の初秋に始まるため、まだ秋を迎えていない少し暑さを感じる夏の日差しを受けつつ、私と左之助さん、助っ人に来てくれた薫さん達の手を借りて、ようやく我が家の掃除を終えることができた。
「久しぶりの我が家だな」
「そうですねえ」
「けんちゃん!あっち!」
「うん!」
ドタドタと綺麗になった広間を駆け回っているしとりと剣路君の姿を微笑ましく見守る私の隣で、まだ剣路君にジェラシーを抱く左之助さんの姿に苦笑し、久しぶりに会えた出版社のおじさんは「うしおととら」の続きに感涙し、何度も感謝されてしまった。
やはり「うしおととら」は超名作ですね。
「左之、蛮竜はどうしたでござる?」
「アレは呼べば来る」
多分、今は太平洋を横断している頃なのではないだろうかと思いながら、枯れ葉を集めて作った焚き火の上に円錐形の鉄板を逆さに置き、金平糖を数粒ほど落として水を加え、茶筅でかき混ぜ、その溶けた砂糖の糸を菜箸で絡めとる。
「はい、二人ともどうぞ」
しとりと剣路君に差し出すと甘い香りに驚いて、直ぐには食べずに眺めて、ゆっくりと口を綿菓子に当てて、ふたりは美味しさに頬っぺたを押さえる。
「雲のような菓子でござるな」
「甘くて美味しいわね……」
薫さんと緋村剣心にも差し出して、一際大きいものを左之助さんに差し出すと足元に視線を感じる。しとりと剣路君が、左之助さんの綿菓子を見つめている。
「ったく。しゃあねえな、ほらよ」
私の持っていた綿菓子を取ったかと思ったら、しとりと剣路君に差し出している左之助さんの優しさに、もう七年も一緒に過ごしているのに、どうしようもなく胸の奥が高鳴ってドキドキしてしまう。
「父ちゃん、ありがと!」
「お父さんかお父様ですよ、しとりぃ?」
「あぷっ、ふぁい」
ぷにゅっとした彼女の頬っぺたを両手で挟み、モチモチと子供特有の柔肌を楽しみつつ、変な一族とはいえ名家旧家の作法は教えておきたい。
帰ってきたと知ったら絶対に来るもの。
「左之助さん、左之助さん」
クイクイと袖を引っ張ると腰を屈めてくれた左之助さんの耳元に背伸びをして、顔を寄せて話をする。他愛ない内緒話だけど、こういうことは大きな声では言えないから仕方ない。
「……あーっ、ウチのもそうだな」
そう、東谷一家も来そうなのである。
いえ、私としてもお出迎えしてくれるのは嬉しいんですけど。まだまだ引っ越しの準備も終わっていないのに、来ちゃったら満足におもてなしも出来ないのだ。