一応、我が家の結界は強めました。
しとりとひとえのモヂカラも加わり、より強固な結界になっているため敵意や害意、人に害を与えるモノを持つ存在は侵入禁止です。
「けほっ、けほっ…っ、けほ」
左之助さん達が寝静まった事を確かめて、口許を押さえながら咳き込み、ハンカチーフで血を受け止めて、口許を拭いて台所で口を濯ぐ。
最近は症状も収まっていたんですが、やっぱりモヂカラや「特典」を使用すると肉体に負担を掛けてしまいます。
出来るだけバレないように隠していた少し重めの薬を取り出して、飲もうとしたその時、私の手を掴む大きな手にビクンと身体を跳ね上げる。
「さ、左之助さん?寝ていたんじゃ」
「この薬は何だ?いつもの飲み薬じゃねえだろ」
「っ、返して下さいっ」
手を伸ばして箋に入った薬を取り返そうとするも左之助さんによって料理の間の床板に背中を押し付けるように倒れ、薄暗い部屋で、左之助さんに見下ろされる。
「答えろ」
「……痛みを、和らげる薬です」
「嘘だな。目を見て言え」
私の事を見つめる眼差しがウソも誤魔化しも通用しない事を理解させてくる。言いたくないと言っても許しては、もらえないですね。
「痛みを、消す薬です」
「効果はあったのは分かる。けどな、明らかに毒の臭いのするヤツを飲むなよ」
「飲まないと、もう動けないんですっ。日に日に効果は薄れて、娘に気付かれないように、どれだけ、私が無理をしていると思っているんですか?」
「いつも言ってるだろ。お前が動けなくなったらオレは死んでも世話するってよ」
そう言って薬を握りつぶす左之助さんの目は、いつもと違ってほの暗く感じ、口付けの時間がいつもよりも長くて、苦しくて、涙が溢れてしまう。
「い、いじわるしないでっ」
「意地悪なんてしてねえよ」
うそですっ、わざとですっ!
「まあ、景のおかげでチビ共に何しても聞こえない部屋は幾つかあるからな」
ジャラリと首に何かが掛かり、まさかと手を伸ばすと言霊の念珠が私に着いていて、これは時代樹様に隠してもらっていたはずなのにと戸惑います。
いえ、それよりも念珠が外れません。
「アイツらが起きるまでは大人しくしろよ?」
「…静かにしますから外してくれますか?」
「断る。時代樹がお前につけろってよ」
時代樹様の唐突な裏切りに私はどうやって答えれば良いのでしょうかと悩み、左之助さんに抱き上げられ、料理の間を移動していきます。
不安と恐れで左之助さんにだきついてしまうけれど。犯人は左之助さんなんですよね。