剣路君と塚山君の剣は正反対です。
荒々しく攻め立てる剣路君の剣に対し、塚山君は静かに正確に捌いて往なしています。やはり剣術を学んできた時間の差は出てしまう。
強すぎるゆえに相手の居ないしとりと違って、剣路君は届き得る天才です。天賦の剣才を持っているのは事実でしょうが、しとりには届いていない。
剣路君は堀の底。
しとりは天守閣の上にいる。
そう例える程に力量差は拭えず、左之助さんはそういう才能の差を腕力と気合いで乗り越えてしまえる人種。まあ、愛娘の恋愛事情でダメージを負っていますけど。
兎に角、しとりは強いんです。
「せやあっ!」
「流石に速いな、剣路君!」
塚山君の褒める言葉に顔をしかめ、竹刀を振るう速度の増していく剣路君。しとりによく似た剣を振るうけれど、彼の身体には適していません。
あくまで、しとりの剣は特注品です。
その相手に対して、どの流派の技を繋げるのかを決めています。一人に対して、しとりは百剣にて相手を制圧していくわけです。
術理の土台が違うんです。
「飯綱使えよ、由太郎さん!」
「えー、流石に子供に飯綱は支えないかな」
「しとりには使うだろうが」
「まあね。強さが違う」
塚山君の言葉に剣路君は怒って、更に剣を振るう速度を増していく。往なしと捌きで防いでいた竹刀が、だんだんと塚山君の身体を掠め始める。
「母様、けんちゃんのかっこいいところはね。しとりを絶対に一人ぼっちにしないところなんだよ」
そう言って笑うしとりは、とても綺麗です。
しとりの言葉に赤く染めた剣路君の動きは止まり、塚山君も動きを止めた瞬間、彼の身体は地面に倒れた。居合、地面と足を鞘に見立てた居合斬り。
避けることは至難の業です。
「由太郎が負けたのか?」
「居合で倒しましたね」
「ねっ、かっこいい」
しとりの言葉にやる気を増した剣路君の逆転勝利に左之助さんはものすごくイヤそうになりましたが、剣路君の頑張りには納得しています。
ですが、私には、わざと居合を受けたようにも見えました。先を見据えての敗北、塚山君も剣路君に何かを見たということなのでしょうね。
......男の人の考えることは、よくわかりませんけど。覚悟を感じ取って、そういう思いを託せると信じているのでしょくが、本当によくわかりませんね。
いえ、左之助さんもそれができる男の子になってほしいから、この大会に出場する権利を与えているといいうわけですね。
やはり、そういうところです。
男の子はめんどうくさいです。