勝ったのに、不満そうな剣路君。
そんな剣路君にしとりは嬉しそうに笑顔を向け、居合の速さで漸く渡り合える人が現れた。それも自分の大好きな男の子なら、嬉しくて仕方ないですよね。
トタトタと剣路君に会いに行ってしまったしとりに「うぐおお、娘に婿が、孫が」と唸って大変なことになっている左之助さんを撫でてあげます。
ひとえのときも、こうなるのでしょうね。
しかし、困りました。
しとりだけは、見ることは出きるかも知れませんが、ひとえの晴れ姿を見るには、時間がありません。強くて素敵な女の子に成長したけれど。
「やはり、難しいですねえ」
「剣心の義理娘になるのは、億歩で妥協するとしてだ。どうしても剣路じゃねえとダメなのか」
「左之助さん、逆に考えましょう。剣路君以上にしとりを任せて安心できる人は居ないんです」
「……いや、だめだ」
頑なに拒みますね。
やっぱり娘がいる父親は難しいです。
姿お兄様に認めて貰えたのは、左之助さんが姿お兄様の強さの基準点を大きく超えたためですが、左之助さんもそれに習っているのでしょうね。
ただ、ハードルがほぼエベレストなんですよ。
せめて、富士山にしましょう。
それぐらいに下げましょう。
どちらも高すぎますけど、剣路君なら乗り越えてくれます。あと、晴れ姿を見て安心したからと言って死んだりしませんよ。
少しは生きて見せます。
しとりとも約束しましたから、絶対に病に負けるわけにはいかないのです。花嫁姿を見て、ようやく安心することが出来るんです。
「しとりは仕方ないとしてだ。ひとえは、なんで心弥なんだ。イタズラ小僧だぞ、それで良いのかよ」
左之助さんは、自分のそばにずっといてほしいのは分かりますけど。そういうのは、もうちょっとだけ我慢して……いえ、外には出しちゃダメです。
私に対する独占欲は許容します。
でも、娘達の恋路は邪魔しちゃだめです。
そういうのは、本当にだめです。
「しとりもひとえも嫁に行ったら、あの広い家にオレだけが残るのか」
「……ちゃんと火葬してくださいね?」
「イヤだ」
そこは素直に頷いてほしい。この身体を利用しようとする人は沢山いますし、左之助さんの傷になりたくないんです。
ちゃんと、してくださいね。
そうしないと私の身体は何処かに持っていかれて、左之助さんにもされたことのないような身体を切り裂いたりすることがあるかもしれませんから。
そんなことを考え込んでいると、ボコボコにされた剣路君としとりが帰ってきました。すでにもうかかあ天下になっていますね。
亭主関白はなさそうです。