第八仕合は明日です。
般若と式尉の二人です。
他のひょっとこさん達は京都の料亭もあるため、仕方なく不参加だそうです。その板前長と女将は、ここにいるわけですけれど。
そちらはもう良いんでしょうか?と聞きたい気持ちになりながらも私は明日に起こる、打撃や科学忍法の事を想像してしまいます。
「般若の勝ちだろうな」
「? その心は」
「打撃の質だ。アイツの正拳は身体の芯に残る。式尉の打撃は全身に衝撃は来るが、時間で収まる。ジンジンと腹の奥に残るのは、般若の拳だ」
ボクシングの教本を書いて、渡したのはもう十年前の事ですけど。おそらく般若は延々と休むことなく修練を積み重ねてきたのでしょうね。
真っ直ぐ内角に抉り混むように打つべし。
剛腕必殺と技巧必殺の勝負です。
そして、おそらくですけど。
お二人の関係も少し変わるかもです。
「闘技場はどうするんだ」
「左之助さんの話を聞くに打撃技ですし。平地に変えておこうと思います」
「お互いの矜持ってわけだが、景はどっちが勝つと思っているんだ?」
「式尉さんです。彼の筋肉は旧式の砲弾を受けて尚も砕けないように強化を重ねて、爆肉鋼体になっていることでしょう」
「ば、ばく?」
「ホーリーマッスルレボリューションです」
「……お前、本当に筋肉好きだよな」
かっこいいですし、仕方ないです。
あ、でも、私が一番好きなのは左之助さんなので安心してください。左之助さんの筋肉で、一番好きなのは大腿四頭筋と大菱形筋と前鋸筋、広背筋、内腹斜筋など沢山あります。
「しとりもひとえも筋肉好きだと思いますよ。あとお髭も大好きです」
「左之助さんも好きな筋肉ありますか?」
「……胸筋」
成る程、確かに左之助さんの胸筋は無駄な脂肪を削いだカッコいい胸筋です。三角筋と大胸筋、小胸筋のバランスはとても素晴らしいです。
「景の身体は小さいからな。筋肉も薄いし、こうしちまえば動けなくなるな」
「なぜ、腰を掴むんですか……」
「筋肉を鍛えるんだろう?」
「えと、そうなんでふか?」
私の事を抱き締めて動き始める左之助さんに困惑していると「お前は敏いのに、鈍いな」と文句を言われ、ベンチプレスのように浮き上がりました。
やっぱり、気になりますよね。
「……軽くなったな、また」
「ちゃんと生きていますよ」
「飯の量も減ってるし、ほん」
「大丈夫ですから」
大丈夫、大丈夫です。
私は、まだ生きていますから、大丈夫です。
ちゃんと晴れ姿を見るまでは、絶対に死んだりしませんから大丈夫なんです。