般若と式尉の二人は鍛練を止めて、お互いに瞑想し、明日に備えているそうです。
御庭番衆の双璧。
四乃森蒼紫を支える二枚看板として名前は裏社会に通っているようです。月岡津南の言葉を聞き、左之助さんは楽しそうです。
以前よりもマッシブになった般若の広背筋もそうですが、式尉の下腿三頭筋も太く筋繊維の密度を上げ、下半身の弱さを補っています。
第八仕合は打撃戦です。
「景、般若のところに行ったんだろ。どうだ」
「瞑想しているだけなのに、部屋に熱気を起こしていましたね。呼吸法によって身体の疲労を取り除き、万全な状態で挑むつもりのようですし」
数十年と一緒にいた二人の仕合です。
お互いに手の内を知り尽くしている。
ですが、奥の手や切り札、虎の子を隠し持っているのは忍者の常識。般若と式尉の奥の手も切り札も一度だって見たことはありません。
まあ、戦場が怖いだけですけど。
「式尉の野郎も更にデカくなってたぜ」
「キン肉マンみたいなボディーですもんね」
「きん?」
「とてもカッコいいヒーローです」
愛がなければスーパーヒーローではありません。愛が一層誰かを強くしてくれる。志々雄真実もまた愛する女性のおかげで、強さを増していました。
まあ、キン肉マンを描いてしまうと世界観は狂ってしまいますし。物理法則は消えて、攻撃は掛け算と足し算の二つになってしまいます。
「個人の蟠りもなく、純粋な勝負ですね」
「蟠りはあるぞ。蒼紫が、どれだけ信頼しているのかがわかっちまう」
「……それは、いやですね」
「けど。男ってのはどうしても信頼できる相棒の実力を越えたいと思っちまうんだよ」
男の子のプライドというわけですね。
しかし、だからといって本気で殺し合ったりするわけはありませんよね。だって、お互いに信頼しているんですから。
「景も試しに薫とやるか?」
「さ、流石に殺人は無理ですよ」
「誰が死ぬんだよ」
「私ですけど?」
私が薫さんに勝てると思っているんですか?と付け加えると「そこはウソでも勝てるって言えよ」と言われましたけど。
ウソを吐くのは無理です。
左之助さんもそれは知っているのにひどいです。
「左之助さんは負けるの、すごく嫌いなのに喧嘩をしますよね。今度、しとりとひとえにその理由を教えてあげてください」
「そんなこと聞きたいのか?」
左之助さんは強いですから、怖いことも立ち向かえる。いえ、左之助さんはきっと怖くても前に飛び出して、弱くても立っています。
ずっと、見てきましたからね。