「青龍の方角。影の主に仕える般若面。御庭番衆頭領の右腕にして参謀。知とは強さなり!拳とは強さなり!鋼の意思にて立つ!御庭番衆、般若!」
「鉄拳は用いぬ」
そう言って鉄拳を外した般若は闘技場に立つ。四乃森蒼紫を見上げ、何かを告げるようにしています。やっぱり、忍者は謎だらけで不思議だ。
「白虎の方角。迎え撃つのは鋼鉄の肉体防ぎ、倒す!御庭番衆の守りの壁、何も越えることの出来ない男!御庭番衆、式尉!」
「勝つのは、俺だ」
緩やかに筋肉を誇示してやって来た式尉に般若の視線は移り、強さだけを求めら圧倒的なパワーを手に入れた式尉の肉体に観客席はどよめきが起こる。
余計な脂肪を削いで筋肉のみ隆起した身体に感嘆する声が聞こえます。しかし、本当に怖いのは縞模様の腕をさらけ出した般若です。
伸腕忍法。
目の錯覚を利用し、伸びるパンチに見せる。
もっとも目のいい人や経験の豊富な人間の嵌まりやすい技でもありますし、式尉も内容は知っていても本気で対峙するのは此度だけです。
左之助さんも「アレは避けるより受けねえとダメだ」と割り切っています。般若と戦ったことのある左之助さんらしいといえば左之助さんらしいです。
しかし、問題はあります。
貫通力。パンチの重さが足りません。
あれだけは鍛練と天性の才能がいります。ひとえのように左之助さん以上の怪力も億万人に数人見つかれば問題ない程度です。
「いざ、尋常に────始めぇ!!」
操さんの合図で般若の鋭く真っ直ぐ伸びる左ジャブは式尉の顔に命中するものの、鼻まで鍛え上げてきた式尉は平然と立っています。
やっぱり、忍者ってすごいですね。
「成る程、骨密度を上げたか」
「おう。蛋白質はよく取っているぜ」
そう言うと式尉も般若のように左ジャブを打つ。しかし、般若の切り裂くパンチと違い、拳大の爆弾が衝突したような衝撃が響き渡る。
パンチの瞬間に、発勁を使ってますね。まさか呂布の攻撃を視て、この短期間で左手だけとはいえ使いこなせるようになるとは────。
流石は、御庭番衆ですね。
伸びるパンチと、爆発みたいなパンチ。強さと巧さの戦いに変わった仕合に観客席も沸き上がり、左之助さんもウズウズとしています。
当たれば終わる。
そういう類いの仕合です。
「効かねえぞ、般若!」
「甘い。ジャブとはこう打つのだ」
式尉のパンチを避け、左ジャブを打ち終わって伸びきったタイミングでカウンターを決めた般若は右ストレートを叩きつけ、素早く連打を打ち込んでいきます。