般若の荒々しい連打を筋肉のみで受け止める式尉の筋肉は分厚くパンプアップし、筋肉の厚みを増して連打を弾き返しました。
ビスケット・オリバみたいなことをしていることに驚くべきなのでしょうが、個人的にはあの筋肉はとても好きです。
豪腕を振るって殴りに向かう式尉の腕を紙一重の間合いで躱し、般若は殴ってフックを打って、下段に蹴りを繰り出し、間合いをつぶす。
元々は拳法家です。
足技にも長けているのは当然の事です。
「(ボクシングや中国拳法というよりムエタイやラウェイに近しいスタイルに変わりましたね。際立つのはパンチの速さですが、式尉さんの踏み込みを蹴りで阻止し、強打を打ち込んでいます)」
スナイパー空手に近しく、思えます。
本当に般若の修練の量には敬服します。ですが、式尉の身体を貫くには、やはり破壊力が足りておらず、悠然と式尉は構えてパンチを繰り出している。
ラフプレイに見えますが、あくまで腰の回転を使える間合いで極めて細かくパワーを伝えるために繰り出し、上半身の肩と腰の使い方が異常に巧い。
「捕らえたぜッ!!」
「ゴオ゛ぉ゛ッ!?」
式尉の手のひらが般若の脇腹に触れた刹那、彼の身体は大きく真後ろに吹き飛んだ。寸勁。いえ、腰の動きから螺旋状に力を伝えていましたし。
「景、今のはなんだ」
「────おそらく、呂布の使った発勁の再現です。ただ、彼は身体の下半身の回転を利用していましたけど、式尉さんは上半身の腰と背骨、肩の回転を利用していますね」
「……相変わらず、戦えん癖に物知りだな」
斎藤一の言葉にハッとして辺りを見ると「なんで、そんなに知っているんだ?」という視線を受け、顔を隠すために左之助さんの真後ろに移動します。
左之助さんも使えると思うんですよね。
私は、そういうことには向いていない身体ですし。
とは言え。このままパワーを付けて殴り合って勝てるほど般若は弱くありません。般若の仮面から溢れる血を見るに内臓に多大な衝撃が響いています。
「二重の極みと違って、手のひらを当てて打つのか。手のひらで打つ分、破壊力は増すな」
「ん、父様と和尚様の技でも出来ないの?」
「できる」
ノータイムで返しましたね。
いえ、子供の信頼に答えようとしてくれるのは本当に嬉しくて仕方ないです。ただ、アレは左之助さんでも覚えるのは時間をかけますね。
まず、身体の動きが違いますし。
左之助さんは身体ごとぶつける勢いですが、式尉の手のひらは腰から引き抜くように打つ。力の勢いが散漫になっているというわけです。