手数の多さは間違いなく般若ですが、一撃の重さは式尉の掌打に劣り、一撃で逆転されるという危険性の高すぎる仕合に観客席も白熱しています。
壮絶な打撃戦です。
目を閉じてしまいたいと思える程に荒々しい。だというのに式尉の掌打は般若の顔には一度も触れていません。いえ、式尉が振れないようにしている。
お友達の名誉と矜持を晒す事を避けているのでしょうが、その隙を作るのは悪手です。
「景、止めるなよ」
「でも、死人が出てしまいますよっ」
「止めたら恨まれる」
「ん、母様は心配しすぎ。はんちゃんとしきくんはちゃんとしてるよ」
そう言ってニコニコと笑うしとりと、うつらうつらと長時間の戦いに眠気に負けてきたひとえを抱き寄せて、膝枕をして眠らせてあげます。
トントンと背中を優しく撫でてあげ、ひとえは眠り始めると般若と式尉の動きも止まり、お互いに打てる渾身の一撃で相手を吹き飛ばす。
「ふ、ふたりとも意識がないわね。勝者不確定のために第八仕合、引き分け!」
操さんの言葉に二人の事を称える声が聞こえ始め、私は当たる瞬間に二人が大きく後ろに飛び退いているところが見え、しとりの「ちゃんとしている」という意味が、ようやく分かりました。
二人が弱ったと勘違いして、動き出そうとしている外国人に御庭番衆をはじめとした各流派の忍者が核鉄だけを盗み取っているのが見え、納得です。
しとりは、いつ気付いたのでしょうか。
「まあ、あとは斎藤の出番だ。不法入国だろうし、適当にボコり倒してくれ」
「阿呆が。俺はもうすぐ定年退職だ」
「何かやりたいことは?」
「土方さんに会いに向かう。それだけだ」
そう言うと斎藤一は煙草を取り出して、すぐに仕舞いました。ヘビースモーカーな斎藤一には、心肺の弱った私の存在は迷惑ですよね。
「もう景は巻き込むなよ?」
「糸色は知らん。だが、しとりかひとえは必ず北海道に来るだろう。お前の飲む薬酒は北海道でしか作られていないらしいからな」
斎藤一の言葉に神酒の事を言っているんだろうと気付き、少なくともわたしが死んでも半分は残るはずだと思うのですが?と言いそうになります。
……きっと、そんなことを言ったら、また左之助さんが怒るかも知れませんし。しとりとひとえも離れなくなるので料理のときは大変になります。
「しかし、あと二つ仕合が終われば暫く時間を開けて、残った五人、それから剣心の六人でだろ?斎藤はマジで出ないのかよ」
「俺は見世物になる気はない」
それは、そうですね。