「……左之助さん、座敷牢はおかしいです」
朝起きたら座敷牢でした。
なぜ?どうして?と考えながらも左之助さんに聞いても答えてくれず、第十仕合は大事な事だと伝えているのに左之助さんは出してくれません。
「勝ったのはあの人形爺さんだ」
「シルベストリが?」
闇討ちではなく、しっかりと闘技場に入り、第十仕合の闘技者を斬り伏せ、五人目の枠に収まり、柏崎さんと同じく途中参戦組になっているそうです。
しかし、私を閉じ込める理由が分かりません。
「お前が寝た後、才賀の爺さんが来た。あの人形の狙いはお前だってのもな」
「だ、出してくれたりはしませんか?」
「終わるまで出さん」
「うぅ、お風呂もなしで」
いえ、四次元袖もあるので大丈夫です。
「…………あ、あの、着替えは?」
「オレの着流しで我慢しといてくれ」
寝巻きの浴衣から、左之助さんの差し出してきた丈の合わない着流しに着替え、下帯を腰に巻いて、座敷牢の真ん中に正座し、ぼんやりとします。
四次元袖に仕舞っているひみつ道具とショドウフォンを使えば直ぐに出ることは可能なのですが、キョロキョロと座敷牢を見回します。
やっぱり、寂しくて左之助さんの着流しを被るように頭を隠して、眼鏡もないので、ずっとモヤモヤと視界が見えなくなっています。
「(寂しいです、会いたいです)」
「かーさま、みっけ!」
「ひとえ?」
「あい!」
「折角、会いに来てくれたのに申し訳ないんですけど、私の眼鏡を持ってきて貰えますか?」
「いーよ!」
トタトタと走る音が聴こえ、暫くするとトタトタと走る音が聴こえてきて、ひとえが手を伸ばしているのがボンヤリと見えている気がしました。
恐る恐る、手を伸ばして眼鏡を受けとるもレンズにものすごい指紋がついていました。レンズを触ってはいけないことを教えていませんでしたね。
「ありがとうございます、ひとえ」
「あい!」
「ついでに出してくれたり」
「とーさまが怒るからヤッ!」
「そ、そうですか」
出してくれない事実に眼鏡の箱に入れていたレンズ拭きを取ってきてほしいんですが、ひとえはニコニコと楽しそうに笑って格子越しに私を見つめています。
少し気恥ずかしく思いますけれど。
左之助さんも今は誰もおらず、ひとえと二人きりになるのはいつものことですが。
「かーさま、だっこしてー?」
「この木製格子があるから、ひとえを抱っこするのは難しいで」
す、と言いかけたところでひとえが格子を引き裂いて、私の腕の中に収まりました。ちょっとだけビックリしてしまいました。