「左之、拙者だけ贔屓なのでは」
「日頃の恨みだろ」
「おろぉ……」
「そんな声出してもダメだぞ。お前、まだ景の事を怪しんでるのバレバレだからな?」
「怪しんでいるわけではござらんよ。糸色殿はどうも妖しさを感じるのでござる。左之は怪しいと思ったことはないでござるか?」
「無い。むしろ、オレの事を破廉恥だ不埒だって言う癖に寂しくて、わざと布団の中に潜り込んでくる可愛い女房にしかみえねえ」
「それは言ってはダメなのでは?」
「……そういやそうだったな。今のなしで」
それは無理なんじゃないでしょうか?と縁側に座って、のんびりと会話する左之助さんと緋村剣心の二人の後ろ姿に何とも言えない気持ちになります。
そもそも怪しむところは無いでしょう。
貴方だって十分に怪しいですし、そもそも私を怪しんでいる理由も曖昧です。私の雰囲気の悪さを緋村剣心は言っているのでしょうけれど。
この雰囲気は怖い目に遭うからです。
「しかし、糸色殿と言えばあの湯水のごとく涌き出る知識は何処で調べているのでござろうか」
「……それなんだよ。景のヤツは明らかにオレの知らないところで知識を手に入れているんだ」
「あの白紙の本でござるか」
私の白紙の本に話題が代わり始めました。アレは安定して「前世の記憶の保持」を使えるようにするというドクトル・バタフライの考案したものです。
向こう側の私も良くしています。
一種のルーティンとして組み込み、能力の精度を高めているわけです。決して、おふざけでしているわけじゃいんですけど。
左之助さんも緋村剣心もそういうのは気にしないんですよね。
いえ、気にしているのでしょうけど。
私や他の人に見せないようにしているようです。
「糸色殿は、やはり何かを隠して?」
「ああ、たまに変なところを見てるな」
……それは、私ではないですね。
いえ、私ではあるんですけど。私の身体に入っている別の人の精神が、ぐちゃぐちゃと悪さをしようてしているわけです。
あと、私の悪口ではないのは分かっていますけど。
そうも長く私のことで盛り上がるのは何故ですか?と聞いてみたい気もします。……やっぱり、怖いのでやめておきましょう。
安全第一です。
怖いものは怖いのです。
「父様、後ろに母様いるよ?」
「なに!?」
「おろ、いつの間に?」
しとりの言葉に左之助さんと緋村剣心は振り返って、ビックリしていますけど。そんなに気付かないほどに私の悪口を言っていたのでしょうか。
そう考えると悲しいです。
泣きはしませんが、悲しいです。