電光丸は猛るように電光を放つ。
八宝斎が構えた刹那、しとりの剣閃が駆ける。闘技場のギリギリの壁に切っ先を突き立て、止まったしとりの姿に何人かは瀬田宗次郎の事を思い出していますね。
事実、そのとおりです。
しとりは飛天御剣流の神速の足捌き。瀬田宗次郎の縮地の足捌き。どちらも使えます。どちらも北海道で見て覚えた日本最高峰の剣客の動き────。
その動きに四乃森蒼紫の流水の動きを加え、神谷活心流の歩法、そして、ススハムの光速の走り方さえもあの子は覚えてあます。
「ん、私を魅せてあげる」
しとりの姿が消える。
音を置き去りに、ただ駆ける。
闘技場の中央に構える八宝斎は前後左右を駆けるしとりを肉眼では追えず、僅かに舞う闘技場の砂塵を合図に攻撃を繰り出す。
しかし、そこにしとりは居らず─────。
「
無尽蔵。
八宝斎は空中で停止したように動きを止め、電光が迸ったちょくごにしとりが現れる。光速の世界に踏み行ったしとりに追い付けるのは、ススハムだけです。
「お、あ?あ、勝者、相楽しとり!」
「ん、わたしはまだまだ強くなる」
ロロノア・ゾロかな?と思いながら、打ち身程度に威力を抑えた攻撃で気を失った八宝斎は操さんに縄でぐるぐる巻きにされて、斎藤一に渡されました。
どうやら逮捕のようですね。
「しとり、良くやった」
「ん!父様もがんばってね!」
にこやかに笑うしとりに顔を赤らめる男の子達ですが、しとりの強さに気後れしています。ですが、あんなに強いところを見せたのに、剣路君はしとりに勝つ手段をまだ模索して、考え込んでいます。
お母さん的には相思相愛の幼馴染みを楽しく応援してあげたいんですけれど。左之助さんだけは、まだ頑なに認めていません。
強すぎる。
「母様、わたしは強い?」
「えぇ、しとりは強いです」
でも、無理をしている。
私のせいで、と口には出せない。
しとりは私の代わりにひとえも左之助さんも守れるようになろうとしています。そんなことしなくても大丈夫です、貴女だけが背負わなくていいんです。
そう言ってあげたいけれど。
私の言葉は届きません。いえ、届いていたとしても彼女を止めるに至る言葉にはなり得ない。彼女を止めるには、誰かがこの子に勝ってあげるしかない。
その期待を私は剣路君に向けています。
左之助さんも少なからず、そう思って行動しているのも分かります。ですが、それでもしとりは強すぎるから、抱え込んでしまう。