某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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黒笠事件 破

緋村剣心は斬馬刀を担いだ左之助さんと共に黒笠の斬奸状を受け取った維新志士の豪邸へと赴き、彼の恐ろしい凶行を止めるために剣を振るうそうだ。

 

まあ、緋村剣心に付いていった左之助さんの目的は凄腕の剣客「黒笠」と喧嘩するという理由に加えて、件の斬奸状を受け取った維新志士名義の喧嘩屋の斬左を用心棒にしたいという依頼も有ったからである。

 

「剣心、大丈夫かしら」

 

「左之助さんも居るし、大丈夫ですよ」

 

「……そうね、二人とも強いもの」

 

ポツリと不安を吐露する神谷さんの手を握り、細やかながらも彼女だけではなく私自身も鼓舞するような励ましの言葉を彼女に伝える。

 

これが前世で読んだりしていた二次創作だったなら、颯爽と転生者は仲間を助けるんだろうけど。私に出来ることは信じて待つこと以外に何もない。

 

「ねえ、糸色さんは黒笠の噂って知ってた?」

 

「……聞き齧り程度は新聞記者の知人に聞いたことはあるけれど。どれもこれも眉唾物の実在するのかも怪しいものばかりだったわ」

 

「でも、黒笠は実在した」

 

神谷さんの言葉に喉が渇き、背筋が冷える。

 

私は黒笠の正体は原作の知識として知っているけれど。この時代に生まれて、人斬りという闇を愉しげに練り歩く彼の存在はハッキリと言ってしまえば異質その物だ。人には少なからず善意は存在する。

 

その筈なのに黒笠は好んで人を斬る。

 

もはや人間の理外を抜き出た「魔物」だ。

 

ふといつの間にか薄暗かった視界が白ばみ始め、私と話していた神谷さんも夜が明けていた事に気付き、申し訳なさそうに私に頭を下げてきた。

 

「糸色、怪我の手当て頼めるかァ……って何してんだ二人して寝巻きのまま」

 

「二人とも寝ずに待っていてくれたでござるか」

 

掠り傷を負っているものの。あまり酷い怪我を負っていない二人に、ほうっと私達は安堵の息を吐いて、ゆっくりと寝巻きから着替えるために戸を閉める。

 

「普通に帰ってきたわね」

 

「えぇ、本当に良かったですね」

 

そう私達は二人の無事をこっそりと祝いつつ、突然の訪問にも対応できる着物姿に着替え終わるなり、今度は勢い良く神谷さんが戸を開け、ボロボロの格好で縁側に腰掛ける二人を見据える。

 

そこで、ふと違和感に気が付く。

 

「左之助さん、斬馬刀はどうしたんですか?」

 

「警察のオッサンが手入れ出来る鍛冶屋に送ってくれるらしくてよ、依頼のついでに頼んできた。斬馬刀もあの黒笠……鵜堂刃衛のヤツに刃先を壊されちまったしな」

 

「鵜堂刃衛…!」

 

「……糸色殿も刃衛を知っているでござるか?」

 

───思わず、鵜堂刃衛の名前を呟いてしまった事を後悔するも時既に遅し。私は緋村剣心、左之助さん、神谷さん、三人からの視線に耐えきれず、小さく頷いて鵜堂刃衛を知っている事を肯定した。

 

「私が知っている事は緋村さんも知っている事だろうと思いますけど。元新撰組の剣士という肩書きに、二階堂平法の遣い手……そして、彼は自分自身が死ぬかも知れないというギリギリの一線に餓えている。そう、私は人伝に聞いたことがあります」

 

私が鵜堂刃衛に関する言葉を言い終えた瞬間、ゾクリと身体が強張り、誰かに見られているという感覚がダイレクトに私の身体を支配され、全身の力が抜け落ちる。

 

「野郎ッ、何処に隠れてやがる!?」

 

左之助さんの叫び声が響く。

 

今のが緋村剣心や左之助さんの身体を一瞬とはいえ金縛りのごとく封じ込める「心ノ一方」────。こんなの本気で受けたら心臓が止まってもおかしくない。

 

 

 

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