しとりと夕飯の買い物をしていると、何やら騒々しく家屋と家屋の間で騒ぐ声が聴こえる。こっそりと覗き込んでみると、二人の男の子がゴミ箱を漁っていた。
「……悪太郎?」
「あァ?誰だ、てめぇ…」
「人に見られた、しかも婦人に!」
しまったと口許を押さえるよりも早く私の声に気づいた彼の鋭い眼光に身体が強張りそうになるけど。この五年間で多少は度胸も付いた身体に力を込めて、しとりの手を引き、路地の中に入る。
「着いて来なさい。そんな物を食べたらお腹を壊しちゃうわよ」
「飯!」
「あ、ありがとうございます!」
「よし。なら買い出しに行きます」
更に買い出しに出費しちゃうけど。
子供が残飯を漁っているところを見てしまったら、こうしなくちゃいけないと思ってしまうのも大人として当然の義務と思う。
「二人の名前は?」
「僕は井上阿爛です!」
「長谷川悪太郎」
まあ、私と二人の歳は一つしか変わらないんだけど。
「しとりもてつだう!」
しとりもお手伝いすると言うので大根を持って貰うと大満足げにフンスと大根を抱き締める。かわいい、いや、お手伝いするしとりが可愛すぎるのね。
お肉屋さんで牛や鳥のお肉を買い、我が家に帰る道すがらに『悪一文字』の服を着た左之助さんと会うけど。似た感じの格好をした人を引き摺っている。
「オウ。コイツら絞めたら帰るわ」
「また居たんですか?」
「五年ですげえ増えたみてえだな。あと連れてるガキ共のことは帰ったら聞かせてくれ」
「はい。しっかりと教えますね」
あれが巷で噂の偽斬左なのかしら?
「でけえ武器だな」
「槍には見えないし、なんだろう?」
「アレは大鉾ですよ」
「大鉾って成人した男でも大人数じゃないと持ち上がらないっていう喧嘩最強の斬左が振るった武器じゃないですか」
「あら、意外と詳しい」
思ったよりも左之助さんのことが東京に根強く残っていて嬉しい気持ちになりつつ、神谷道場の横に建つ商家の正門を開け、二人を招き入れる。
「居間に案内する前に手洗いと嗽はしてね?しとりもお母さんと一緒にしましょうね」
「んーっ!!」
二人が手を洗い終わったらしとりと一緒に手を洗い、二人を居間に案内して煎餅とお茶を出す。ご飯が出来るまでの継ぎだから余り多くはないけど。
野菜とお肉を切り、事前に火を焚いて煮込んでいた出汁に切り分けた野菜とお肉を投下していく。やっぱり秋はお鍋を始める時期だと思う。
牛も鳥も良いけど、個人的には魚のお鍋も好き。左之助さんが帰ってきたら二人の事を説明しないといけないけど。長谷川悪太郎のほうは五年前に会っている。
多分、大丈夫な筈よね。
「うん、白米も炊けてる」
料理を始めると同時に火を移していた土鍋の中で、ふっくらと炊けている白米を飯櫃に移していき、次々と居間に運んで、最後にお鍋を机の上に置いて二人に食べても大丈夫と伝える。
「いただきます!ほら、悪太郎も!」
「お、おう、いただきます!」
「いたぁきます!」
二人に負けじと白米を食べるしとりの頬っぺたに付いた米粒を取り、彼女に食べさせる。私は左之助さんが帰ってきてから一緒に食べようかな。