「景の姉ちゃん、ちょっと良いか?」
「なんですか?」
明神君に呼ばれてそちらに使うと、ものすごく緊張しすぎて気を失っている燕さんを介抱する恵さんと薫さんがいました。
主催席の後ろの方で寝かせましょう。
あそこは広いですし、緋村剣心や薫さんも傍に居ますから燕さんも安心できるはずです。しかし、燕さんには親近感があります。
私も緊張しすぎてしまいますから。
「ん、弥彦先生。どうしたの?」
「しとりか。いやな、燕が倒れてよ」
「燕ちゃん、よわよわ」
「そりゃあな」
しとりは気を失っている燕さんのおでこを撫でて、何処かに向かうと眠そうなひとえを抱っこして戻ってきました。どうやら、燕さん。「癒やしの力」で起こそうとしているようです。
ぺカーッ!
「相変わらず摩訶不思議よね。医学に喧嘩を売っているようにしか見えないわ」
「ひーはけんかしないもん」
「ん、ひーちゃんはグーしたら吹っ飛ぶ」
そろそろ左之助さんを追い抜けそうなパワーですし、本当にどこからその怪力が?と首を傾げつつ、私はひとえを抱っこするようにだきしめます。
私の頭を触るひとえの手は、またぺカーッと蛍火色に光って私の頭を光らせます。フェイスフラッシュとかイケメンビームとか出来そうです。
……イケメンビーム、左之助さんなら?
そんなことを考えながら逆刃刀と木刀を腰に佩いて今日の仕合に向けて考える明神君を見ます。優勝候補のひとりですし、シルベストリより強いです。
しかし、怪しくもあります。
シルベストリの体内のゾナハ虫はモヂカラで無力化していますけど。どうにも剣術だけで勝ったにしては怪しく、傷口がおかしい。
「ん、母様また考え事してる?」
「えぇ、していますよ」
「父様が『母ちゃんの考え事は止めろ』って言ってたから、わたしとお話しよう?」
どういう意味なのかを聞きたくなりますね。
「ん、弥彦先生も勝ってね。わたし、まだまだ強くなりたいから」
「生意気だなあ?」
ワシャワシャとしとりの頭を撫でる明神君の手をそっとはね除ける手、左之助さんでした。
「なにすんだよ」
「撫ですぎだ。オレの娘だぞ」
「ん、撫でていいんだよ?」
よしよしとしとりの頭を優しく撫でてあげながら、私は左之助さんを見ると虚空を撫でていました。私の動きに合わせて連動させるのは、ちょっとだけ怖いです。
そういうのはダメですよ?
「左之助さん、ひとえの抱っこを」
「おう」
ひとえをお願いして、主催席に向かう左之助さんを見送って私はしとりに抱っこされて、主催席まで上がっていきます。