杖を突いた老紳士風の見た目の自動人形「シルベストリ」の目の前に立つ明神君は木刀の握りを確かめて、ゆっくりと意識と視線をシルベストリに向ける。
剣術の腕前は明神君です。
シルベストリはただ斬りやすいところを斬っているだけで、明神君のように剣術の理念を学んだわけではありません。強いですけど、シルベストリは届かない。
自動人形の黄金律────。
シルベストリら美しく綺麗な太刀筋を見てしまうと動きを緩めて、その剣術の動きを細かく見るために剣術の動きを止めて、観察してしまう。
明神君はその事を知りません。というより、教えるのは卑怯と言われてしまいました。
みんなと同じく、剣士です。
「いざ、尋常に────始めェ!!」
操さんの叫びに先に動いたのはシルベストリでした。しかし、斬りかかった相手は明神君ではなく地面、砂塵を巻き上げ、砂塵の天幕を張る。
主催席は斜め上の場所で見下ろす形状のため、シルベストリも明神君もよく見ることは出来ます。しかし、あからさまにシルベストリは小手先の技を使う。
小手先の技は、崩しや返しの類いですけど。
「あの御仁の剣術、動きは剣術でござるが人に使うものではござらんな」
「ただ、斬るための動きね」
シルベストリの左右の手の甲を飛び出す直剣型のサーベルを明神君は白刃取り、その剣身をテコの原理で粉々にへし折っていきます。
「ん、アレはまだ難しい」
「まあ、子供の腕力じゃまだ無理だな」
「でも、ひーちゃんは折れるよ?」
「ひとえは父ちゃん譲りだからな」
「むう」
グーパーと自分の手のひらを握って開いて、また閉じるということを繰り出すしとりに可愛らしさを感じ、ソーキュートですと微笑んでしまいます。
しかし、あの技は奥義ですし。
神谷流の奥義。
まだ剣路君も覚えていないはずですし、しとりがいきなり使ったらすごく困るのでは?と考えていると、シルベストリが片腕を引き抜いて、腕の中に仕込んでいた刀を振り抜きます。
何だか「どろろ」の百鬼丸みたいです。
「仕込み刀か。毒の類いは塗っていないが、何かしら仕込みを加えているだろう」
御庭番衆の慧眼に感心しつつ、明神君は木刀を抜いてシルベストリの片腕を殴り砕き、摺り足で後ろに下がってまた木刀を腰に佩く。
あれは様子見ではなく警戒ですね。
間近で何かを感じたのでしょう。
私には見えませんでしたけど。いえ、見えないではなく感じないのほうが正しいですね。達人の感覚なんて素人の私には全く分かりません。