某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

1507 / 1508
明神弥彦 対 シルベストリ 序

杖を突いた老紳士風の見た目の自動人形「シルベストリ」の目の前に立つ明神君は木刀の握りを確かめて、ゆっくりと意識と視線をシルベストリに向ける。

 

剣術の腕前は明神君です。

 

シルベストリはただ斬りやすいところを斬っているだけで、明神君のように剣術の理念を学んだわけではありません。強いですけど、シルベストリは届かない。

 

自動人形の黄金律────。

 

シルベストリら美しく綺麗な太刀筋を見てしまうと動きを緩めて、その剣術の動きを細かく見るために剣術の動きを止めて、観察してしまう。

 

明神君はその事を知りません。というより、教えるのは卑怯と言われてしまいました。

 

みんなと同じく、剣士です。

 

「いざ、尋常に────始めェ!!」

 

操さんの叫びに先に動いたのはシルベストリでした。しかし、斬りかかった相手は明神君ではなく地面、砂塵を巻き上げ、砂塵の天幕を張る。

 

主催席は斜め上の場所で見下ろす形状のため、シルベストリも明神君もよく見ることは出来ます。しかし、あからさまにシルベストリは小手先の技を使う。

 

小手先の技は、崩しや返しの類いですけど。

 

「あの御仁の剣術、動きは剣術でござるが人に使うものではござらんな」

 

「ただ、斬るための動きね」

 

シルベストリの左右の手の甲を飛び出す直剣型のサーベルを明神君は白刃取り、その剣身をテコの原理で粉々にへし折っていきます。

 

「ん、アレはまだ難しい」

 

「まあ、子供の腕力じゃまだ無理だな」

 

「でも、ひーちゃんは折れるよ?」

 

「ひとえは父ちゃん譲りだからな」

 

「むう」

 

グーパーと自分の手のひらを握って開いて、また閉じるということを繰り出すしとりに可愛らしさを感じ、ソーキュートですと微笑んでしまいます。

 

しかし、あの技は奥義ですし。

 

神谷流の奥義。

 

まだ剣路君も覚えていないはずですし、しとりがいきなり使ったらすごく困るのでは?と考えていると、シルベストリが片腕を引き抜いて、腕の中に仕込んでいた刀を振り抜きます。

 

何だか「どろろ」の百鬼丸みたいです。

 

「仕込み刀か。毒の類いは塗っていないが、何かしら仕込みを加えているだろう」

 

御庭番衆の慧眼に感心しつつ、明神君は木刀を抜いてシルベストリの片腕を殴り砕き、摺り足で後ろに下がってまた木刀を腰に佩く。

 

あれは様子見ではなく警戒ですね。

 

間近で何かを感じたのでしょう。

 

私には見えませんでしたけど。いえ、見えないではなく感じないのほうが正しいですね。達人の感覚なんて素人の私には全く分かりません。

 

 

 

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