手のひらに刀剣を刺して腰を落とした独特の居合の構えを取ったシルベストリに明神君は警戒心を高めて、ゆっくりと腰に佩いていた木刀を抜く。
シルベストリの高速上下に切り裂く居合を受ける寸前、明神君はシルベストリの両腕の交差する瞬間を狙って、木刀を振り下ろした。
イビツな衝撃音と共にシルベストリの両腕の前腕部は砕け、グニャリと人工筋肉と人工繊維で無理やり繋がった状態で動いています。
「(キネマ版の鵜堂刃衛に見えますね)」
ですが、シルベストリに狂気はありません。
感情の存在しない自動人形にとって両腕の破損など些細な現象でしか無いのでしょう。折れて関節の増えたシルベストリの動きは不規則さを増しました。
「きっしょ」
「し、しとり、どこでそんな言葉遣いを?」
「信二が言ってた」
「(信二呼びも気になりますけど)左之助さん、不破さんはしとりに悪い言葉を教えていますっ」
「それぐらい良くないか?」
「よくないですっ」
しとりの可愛いお口から「きっしょ」なんて言葉が出てくるなんて想像……いえ、聞いてしまったショックで寝込んでしまいそうです。
うぅ、不破信二はやはり悪い人です。
落ち着いてから、闘技場を見ます。
明神君は一度も手傷を負わず、正確に太刀筋を変えて、受け流し、往なして、反撃しています。強い。基礎を極めた人間ほど堅牢です。
「……明神君、制極界を会得したんですね」
「糸色殿、その『せいきょくかい』とは?」
「達人の間合いです。緋村さんや剣路君の使った天翔龍閃を放つとき、相手を引き込むように生じる集束に似ていますけど。制極界というのは攻防一体の奥義。相手の攻撃を跳ね返す活人剣の極致です」
そう言って明神君を見ます。
聖剣関連の出来事でしょうが、まさか制極界を見ることになるなんて驚きです。明神君の努力の成果とも言える最高の奥義────。
「ん、わたしもやりたい」
「先ずは剣道を極めるのが先ですね」
「ん!」
シルベストリの手足を木刀で折った明神君の勝利だと思っていたその時、シルベストリの身体が爆発してゾナハ虫が空中に飛沫になるもモヂカラで無効化しているので、ゾナハ病にはなりません。
なにより、しとりやひとえが近くいたのですから、この闘技場でゾナハ病に掛かることはありません。むしろシルベストリという戦力は消えてしまったわけです。
───とは言えです。
疑似体液の清掃で暫く、また中止することになりそうです。本当に悪いことばかりしますね。