目を覚ますと両側に天使がいます。
眼鏡を探すように頭の上で手を動かす。指先がメガネケースに触れ、眼鏡を掛ける。まだ午後三時程度ですね。一時間二十三分四十九秒です。
睡眠時間としては、そこそこでしょうか。
スヤスヤと眠る姉妹を起こさないように這い出て、眠気を覚ますために台所に向かっていると、料理の間の囲炉裏で夕御飯に用意していた味噌豚を左之助さんが、ひとりで食べていました。
「……まだ、煮込みの途中ですけど」
「火は通ってたぞ」
「味を染み込ませ……いえ、眠ってしまった私が悪いですよね。ごめんなさい、冷やご飯を食べていましたよね、すぐに温め直します」
「平気だ。汁かけにした」
塩分過多っ。
ちょっとだけ困ったように苦笑いを浮かべ、水道で桶に水を溜め、眼鏡を外して顔に軽く水を浴びせ、手拭いで顔の水気を拭き取っていきます。
お化粧はしていますが、基本的にスッピンか軽く白粉を塗ったナチュラルメイクです。口紅は基本的に着けませんね。あれ、唇が痒くなるんです。
「景、聞いて良いか?」
「はい。なんですか?」
「この大会の裏で何がある?」
「……すみません。どういうことですか?」
「蝶野のオッサンが来ねえだろ。あのオッサンがこんな派手な騒ぎに来ないはずがない」
その言葉に思わず、なっとくする。
「左之助さん、考えすぎです。きっとパワード一家と過ごしているただけですし。ドクトルの暗躍なら、私も気付くことは出来ます」
「ほんとうか?」
「本人に聞いてみますか?」
ひみつ道具「取り寄せバッグ」を袖から取り出して、にゅるりとドクトル・バタフライの頭だけを引っ張り出すと「HALO」と彼は呟きました。
「フム。なぜ、頭だけなのかね?」
「体は大きくて狭くなるので」
「確かに小さい景からするとオッサンもオレもデカすぎて邪魔になるか?」
「確かにそうだね。しかし、改めて近くで見ると糸色君はヒップラインが出ているね」
「……囲炉裏にくべますよ?」
「おっと、失敬」
失敬ではありませんっ。なんなんです?
みんな、エッチな悪戯ばかりするんです。流石に私でも気付きます。怒りはしませんけど、ちょっとだけ悲しくなりました。
「しとりもひとえもさっき眠るときに胸を触ってきましたし。どうしてなんですか?」
「そりゃあ、景は良い女だからな」
「そのとーり」
わざとですね。
騙されません、許してあげません。
しかし、みんなは私に執着しなくても十分に生きていけると思うんですけど。
左之助さんもそうです。