アの三馬鹿が揃ったものの。
特に物語は進展しないどころか普通に働き始めた二人と遊びに来る……というより長谷川君の言った「抜けない刀」の所在を聞こうと連日の様にやって来る久保田さんにもお弁当を作ることになってしまった。
「油で揚げた肉うめえ!」
小麦を石臼で挽いて作った小麦粉を使った唐揚げに吠える長谷川君の両隣で頷く井上君と久保田さんの姿を眺めつつ、左之助さんに唐揚げを食べさせて貰っているしとりに少しだけ良いなと思ってしまう。
「これすき!」
「景の作る飯はどれも美味いぞぉ?」
今夜の晩酌に薫製にした叉焼を出すべきかしら?と私の手料理を褒めてくれる左之助さんに出す夜中のお摘まみを考えていると、お店の先にお婆さんとアフロのようになった癖毛の男の人が見えた。
「……こんなところまで」
「なんでぇ知り合いか?」
「オレの刀が欲しいって言ってたヤツか」
そう言うと長谷川君は背中に背負った焼け焦げた打刀を手に取り、その柄を力強く握り締める。しかし、今は抜けるようには見えない。
何か切っ掛けがあれば抜けるかな?
「随分と騒がしいところにいるじゃねえか。旭」
「どうやら御宝は見つけたようだね」
ズカズカと会社の中に入ってきた瞬間、重苦しい圧力が弾ける。さっきまで仲の良い人達と話したり、ご飯を食べていた社員が一斉に二人を睨み付けている。
「へえ、この俺と殺るってか?」
「止めとけ、爆裂頭。此処にいるのは
「上等じゃねえかッ!!」
「火に油を注いでますよ、左之助さん」
「あーっ、思ったより馬鹿だったか」
扇子。いや、鉄拵えの鉄扇を振りかざして左之助さんの事を殴ろうとした瞬間、彼の身体は真逆、真後ろに向かって弾け飛ぶ。
「喧嘩を売るなら相手見な。こちとら日本最強の喧嘩師としての看板を背負ってんだ」
……カッコいい……。
ドン!と背中の『悪一文字』を見せつける左之助さんの姿にドキドキしながら一撃で気絶してしまった男に呆れるお婆さんは帰っていく途中、小さな風呂敷を落として行ってしまった。
「おい、忘れも……いねえ」
「書類ですかね?」
「食いもんじゃねえのか、オレ要らね」
「私の身請け代のやつだ。破いちゃえ!」
「やぶいちゃえ!」
ワチャワチャと騒ぎ始めた皆を見ながら、クスクスと笑ってしまう。左之助さんも揉みくちゃにされてるけど、楽しそうで、しとりも久保田さんの真似をしながら一緒に人別帳と紙をビリビリと破っている。