遅くなってしまいました。
「左之助さん、怒りますよね」と人気の消えた道を歩き、独り言を呟いていたとき、異国風の装いを着た男の人とすれ違う。
オオイミ王様……
私の身体の中にいる月の国の剣士の呟きにビクリと身体が跳ね、恐る恐る見上げる。「月光条例」のラスボスでありながら、主人公・岩崎月光の二人目の理解者。超越善悪。正義という欲望を持つ、悪でありながら善を求める月の王様─────。
オオイミ王。
作中で敗北せず、元の月に戻ったラスボス。
「迎えに来たぞ。トヨウケビメ」
「お、お待ちください!王よ、どうかまだ猶予を。あの子は、カグヤはまだ刑期を終えておりません。私だけが帰るなど…!」
私の身体と声でそう訴える彼女の言葉にオオイミは笑みを浮かべた瞬間、彼の手は私を薙ごうとした。ですが、当たる寸前に拳は止まる。
「人の女に何の用だ。えぇ?でか唇」
「相楽、左之助」
まるで岩崎月光を見つけたときのように笑みを浮かべるオオイミに身体は竦み、その場にへたり込みそうになる。
世話の焼けるッ、壁際まで離れなさい
トヨウケビメ。
さっき、そうオオイミは呼んだ。トヨウケビメは八人の天女の一人であり、天女の羽衣を地上の村の男に奪われ、結婚し、子供を成す。
「貴様の事は知っているぞ!悪道を進みながら正義を成す、正しく秋葉流のように!」
「誰だソイツはァ!?」
慌てて鏡面世界に二人を送り込む。
私も巻き込まれ、二人の戦いをみつめます。
「ひ、ひぃんっ」
殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。
足を止めて、殴り合う。
左之助さんの拳は二重の極みだというのに、オオイミは平然と笑って───嗤って左之助さんと殴り合い、だんだんと打撃戦は荒々しくなっています。
「と、とめないと」
どうやって?と手が止まる。
左之助さんだけならお願いすれば止まってくれるでしょうが、絶対にオオイミは止まりません。いえ、それどころか左之助さんに勝ち始め
「────っ、左之助さん、がんばって!」
「づうおらあっ!!」
「乙女の声援で持ちこたえるだとっ」
乙女、ではないのでは、いえ。