「……うぷ…ッ……!…う゛ぇっ……」
「景さんは相変わらず治ってないのね」
函館に到着するまでの出来事は原作と同じだったため、特に語るところもなく、私の心身を蝕み続ける船旅であったこと以外は何も変わっていない。
いや、変わっているところは左之助さんと私は北海道の漁業や農業の方々と交易を行い、東京まで食材を運ぶ航路提携を結びに来ている。
井上君は乗り気、長谷川君は北海道の料理、久保田さんには砂金が取れるという話をしたため、わりと三人三様のやる気と楽しみを持っている。
「景、おぶるか?」
「す、すみません…」
ゆっくりと左之助さんの背中に寄り掛かって、しとりも抱っこしているのに、私までおんぶしてもらっていることに申し訳ない気持ちになりながら夜道を歩く。
しとりも剣路君もスヤスヤと眠っているけど。
なんだか更に申し訳ない気持ちになる。
「景ちゃんさん、船酔い酷いの?」
「私が話して良いのかは分からないけど。景さんって元々身体が小さい上に身体も弱いから、少し環境が変わると体調を崩しちゃうのよ」
薫さんの話を聞く久保田さん達の労りや慰めの視線に苦笑いを向けると井上君と久保田さんに「身体には気を付けて下さいね」と言われ、長谷川君にも「ちゃんと悪いときは悪いって言わねえと大変な事になるぜ?」と忠告されてしまった。
「宿は由太郎が用意してくれたヤツがある。そこまで行ったら各自で休んどけ。剣心、親父さん探しはオレも手伝うが、アレは持ってるな?」
「おろ?……嗚呼、アレか。一応、懐に仕舞っているでござるよ。言われた通りに一度試したが、拙者は本気で使う気にはなれん」
「だろうな。オレもやってみたが、ダサい上に蛮竜が勝手に熱風を撒き散らして大変な事になった」
「……あの時は死にかけました…」
「糸色殿も大変でござるなあ」
そう言って私の事を案じてくれる緋村剣心だけど。この前も私の事を怪しそうに見ていたことは忘れない。五年前も怪しんでいたけど、五年経っても怪しむのは可笑しくないですか?
そりゃあ生まれ変わって物語の内容は知っていますけど。私に何かを成し遂げる様な体力はないし、走るのも遅いし、身体も弱いから……やめよう。
自分で言ってて悲しくなる。
「しかし、剣心も完全に回復してるみたいで安心したぜ。これなら、五年前に果たせなかった喧嘩の続きも出来そうだな」
「左之は本当に喧嘩が好きでござるな」
「一番は景としとりだがな」
「拙者も一番は薫殿と剣路でござるよ」
…そう言うのは本人のいないところでしてほしい。