「しとり?」
「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛」
怒る声が聞こえます。
いえ、分かっているんですけど。どうにもイメージからかけ離れてきたしとりに、ちょっとだけ可愛いと思ってしまう私は親バカなのかも知れません。
とても可愛いです、ソーキュートです。
「私が言うのもあれだけど。危機感の無さはホントに筋金入りみたいね」
「トヨウケビメさんが、すなおに出ていってくれれば丸く収まるんですよ?」
「断るわ」
「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!!断るのダメ!母様から出ていかないと母様に抱きつけない!私だけ抱きつけないのはイヤ!ひーちゃんもそう!」
「オレも断固出ていけと言わせてもらう。景に触ろうとする度に出やがって、こっちはもう2日も景に触れてねえんだぞ!」
「......ねーはまととーさまうるさいね」
「あ、あはは」
流石に返すべき言葉が見付からず、左之助さんとしとりを見つめながら、ひとえの頭を優しく撫でてあげる最中、私の身体の一部は銀色に変化し、二人のことを何度も押し返している状況です。
「母様じゃなかったら斬ってる!」
「そうだな。分かるぞ、しとり」
「あの、流石に怖いです」
「そうね。お姉さん、泣いちゃいそう」
私の身体で泣き真似するトヨウケビメのせいで、左之助さんがまた畳に倒れてしまう。最近、気付きましたけど。左之助さんって、私と同じで浮気や不倫を嫌っているタイプだったんです。
「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛」
「ねーさま、喉が痛くなるよ?」
「ん!ん!ん!ひーちゃんはなんで怒らないの?母様にひどいことしてる!」
「びーちゃんは良い子だよ?かーさまの心臓を守るみたいに手で包んでくれるから、光る手で治しやすかったよ?」
「は?」
その呟きはドクトル・バタフライでした。まるで、自分の役目を奪われた役者のように私を見つめ、すぐにまた普段の余裕の笑みを浮かべる。
「左之助さん、そういうわけなんです。トヨウケビメさんは乗っとると言っているんですが、私が少しでも長生きできるように手伝ってくれているんです」
そう言うと悲しそうに左之助さんはうつ向いてしまい、泣きそうなしとりを優しく抱き締めてあげる。大丈夫、あと二年ぐらいは生きるつもりです。
生きるつもりですが、境君の視線を考えると一年か半年後には私は死んでいます。