五芒星形西洋式大城郭五稜郭にやって来てしまった私は不安と嫌な予感を感じながら剣客兵器の待っているという露天牢を見下ろす。
干支の名前を地面に刻んだ円の中に座り、静かに背中を向けている大柄の男の人、あれが私を呼んだという剣客兵器の凍座白也なのだろう。少し記憶に残っている彼より身体が大きく思えるけど。
多分、私の気のせいだろう。
「凍座ァ!!」
「……ムッ。小鬼か?」
のっそりと凍座白也が顔を上げた瞬間、私の全身を突き抜ける様な悪寒と恐怖に身体の力が抜け、その場にしとりを抱えたまま私はへたり込んでしまう。
この人は、雪代縁より恐い人だッ……!
「おおおおおっ!!!遂に会えたな、糸色景!お主自身は闘うものではないが異形の闘姿とは、流石は兄君の言っていた通りの才媛よ!」
「兄君、まさか姿お兄様を知って……」
「短身痩躯、赤い髪に頬の十字傷、もしや伝説の緋村抜刀斎か!ようやく儂の求める猛者を連れてくる事を選んだようだな!!」
自分の話したいことを一方的に話す彼に緋村剣心が掛け橋を使って露天牢に入り、凍座白也の傍に歩み寄っていくのを私達は固唾を飲んで見守る。
「糸色殿、お主も来てくだされ!」
「…………行きますか、相楽サン」
「えっ、えぇ?い、行かないとダメですか?」
「うむ、行ってくれたまえ!!」
チラチラと警官隊や軍人の人達の見守る中、三島栄次の言葉に焦りながら再び用意された掛け橋に不安と恐怖を抱きつつ、しとりを左之助さんに預けて、ゆっくりと緋村剣心と同じように露天牢に入る。
「し、失礼します」
「糸色殿、拙者の後ろに居るでござるよ」
「うむ!うむ!話には聞いていたが、やはり二人とも本当に小さいな!先ずは緋村抜刀斎と話したいところだが、糸色殿に単刀直入に頼みがある」
その言葉に誰も彼もがゴクリと唾液を飲む。
「お主が幼少の頃より書き記していたという極秘の兵法書に新造兵器の図案の全てを我ら剣客兵器に譲ってはくれぬか?」
「糸色殿、やはり……」
「緋村さん、その『やはり』ってどういう意味ですか?!……コホン、失礼しました。えと、凍座白也さんでしたよね。貴方の言う極秘の兵法書というのは分かりませんけど、新造兵器の図案でしたら、五年前に斎藤さんにもう全てお渡ししています」
「景、宿に帰ったら話がある」
少し怒気の籠った左之助さんの声にビクリと身体が強張り、恐る恐る露天牢の外を見るとしとりを抱っこしながら怖い程に笑顔を向ける左之助さんがいた。
「ふむ。兄君の話では『黒歴史ノート』なる物を纏めた書物を隠し持っていたと聞き及んでいるが?」
「……し、シリマセンガ?」
スンと緋村剣心と左之助さんの顔付きが変わり、掛け橋が掛かると同時に左之助さんが私を抱き上げ、何処かに連れて行こうとする。
「三島、ちょいとしとりを頼むわ。しとり、父ちゃんは母ちゃんに話があるから待っててくれな?」
「ん!」
「私は、私は、悪くありませんよ!!」
そう言って私は最後の抵抗を試みる。