某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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黒笠事件 急

神谷活心流道場の近くに来ていた黒笠・鵜堂刃衛を追い掛けて行った緋村剣心を心配し、私や左之助さん、明神君の制止も振り切って神谷さんは緋村剣心を追い掛けて行ってしまった。

 

もしもの場合を考えて左之助さんと明神君の二人は私の傍にいると言ってくれたけれど。鵜堂刃衛の放った「心ノ一方」に掛かったのは私だけ。

 

おそらく彼の事を細かく話そうとした私への忠告か、あるいは緋村剣心の次に斬り殺す相手と定めた警告なのかも知れない。

 

「薫の飯より美味いぞ、糸色」

 

「神谷さんも日々お料理の腕前も成長していて、美味しいご飯を作れるようになっているわよ?」

 

しかし、緋村剣心と対峙してしまえば鵜堂刃衛の行く末も原作に沿った結末を迎えるだろう。……そう信じたいけれど、左之助さんは未だに『喧嘩屋の斬左』として、喧嘩仲裁や揉め事を止める活動をしている。

 

「御櫃が空になる勢いねえ…」

 

モリモリとご飯を食べる明神君と左之助さんの食べっぷりに私は感心しながら、いつ二人が帰ってくるのかと正門の近くに視線を向ける。

 

「心配すんなよ。薫の傍には剣心がいるんだ。その黒笠なんかに剣心が負けるわけねえよ」

 

「確かに、アイツが未だ人斬り抜刀斎(・・・・・・)だったなら負けはしねえだろう。だが、アイツ自身が刃衛との〝人斬り〟の経験の差を感じてやがった。……ひょっとしたら、なんてことも有り得るぜ」

 

「うるせえぞ左之助!!剣心は負けねえ!」

 

「今のはお前の方が五月蝿せえぞ。それに、アイツが負けたら次に刃衛と殺るのはオレだ」

 

ご飯時に言い合いを始める二人は言い方に差はあれど緋村剣心を心配しているのだ。私も同じように鵜堂刃衛の策略に嵌まって、神谷さんを拉致される展開を知っているため、その不安は少しずつ重さを増していく。

 

「……帰ってきたみたいだぜ」

 

ボソリと左之助さんが呟き、私と明神君は顔を見合わせ、襖を開けると同時に正門を見る。ところどころが血で濡れた緋村剣心を追い掛ける神谷さんが、そこに二人とも死なずに立っていた。

 

「嗚呼、本当に良かった。二人が無事で…」

 

「だから言ったろ。剣心は負けねえってよ!」

 

「チッ。わぁーったよ、悪かったって」

 

ほっと安堵の息を吐く私の後ろでまた言い合いを始める左之助さんと明神君に、今度は別の意味で溜め息を吐きつつ、神谷さんと緋村剣心に手を振るう。

 

「糸色さん、良かった!」

 

「大事は無かったでござるか?」

 

次の瞬間、いきなり私に近付いてきた二人は私の身を案じる言葉を言ってきた。───思わず、気の抜けた「へ?」という声が漏れ、言い合いをしていた左之助さん達の視線も私に注がれる。

 

「あっ、ごめんなさい。説明しなくちゃ分からないわよね、でも刃衛が『あの眼鏡の娘を良く見ておけ』って不安を煽るような事を言い残したから…」

 

「おそらくは糸色殿の正確な図案作成の技術、外交や商人を凌ぐ外国語の多弁さを狙う輩が居ることを言っていたのだろうが……」

 

二人とも不安を煽る事を言わないでほしいなあ…。

 

そんなことを思いながら武田観柳にも自分の図案や設計図、外国語を話せるというところを気に入られていた事を思い出し、頬が引き釣る様に苦笑が出てしまう。

 

 

 

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