……どうしよう、迷子になってしまった。
キョロキョロと人混みの中に左之助さんか知り合いの誰かが通るのをしとりと一緒に探していると煙草の臭いが鼻腔を擽るけれど。
直ぐに煙草の臭いは消えて、しとりと私を見下ろすよう三角巾で左腕を吊るした斎藤一がそれはもう面倒臭そうに私達を……私の事を見つめている。
「す、すみません」
「阿呆が。旦那はどうした、旦那は」
「今は別行動中で、」
「母ちゃん、まいごなの!」
「しとり?しとりさん?やめて、ね?」
唐突に娘の暴露に深い溜め息を吐く斎藤一。
私だって好きで迷子になっているわけじゃないのに酷い。確かに、体力は無いから人探しには不向きな方ですけど。これでも頑張っているんですよ!?
「今回の件は俺も聞いている。見せろ」
「……ひぃん」
「泣く前に見せろ。全く、いい加減にしないと本当に警察署で監禁するよう進言してやろうか」
私は鞄の中に仕舞っていた「黒歴史ノート」を殆どの人に読まれるという羞恥心を抉るような行為を何度も受け、しとりの頬っぺたを触って癒しを求める。
「……出海?何故、ここに出海がいる」
「出海?……あっ、陸奥出海ですね」
そういえば「修羅の刻」も絵を描ける楽しさで書いて、いや、なんで陸奥出海の事を知ってるのだろうか?と私は小首を傾げる。
「悩む前に答えろ」
「えと、陸奥が知り合いだから?」
正確には姿お兄様が陸奥に会ったと話していたから、その冊子に書き記したというのもあるけど。あの時の姿お兄様は楽しそうにしていたな。
「……ホウ。ならアイツも生きているんだな」
あ、これ言葉を間違えたやつだ。
しとりを抱っこしながら私は恐い顔で「黒歴史ノート」を読み続ける斎藤一に怯えつつ、しとりが金平糖を食べる度に笑うので癒しを感じている。
「他にヤツの詳細は分かるか」
「そ、そこまでは」
原作だと明治に息子が登場していたけど。今は明治十六年だから、十歳か十一歳くらいだろうし。こんなところに連れてくるとは思えない。
「しかし、お前は妙な縁を結ぶな」
「そ、そうでしょうか」
「嗚呼、普段は阿呆で情けないがな」
「……泣きますよ?」
「生憎と本官は迷子の泣き言に付き合うつもりはない。が、お前達の泊まっている旅館まで着いていってやる。抜刀斎に伝える事も出来たからな」
緋村剣心に伝えること?なにか私はやってしまったのだろうかと考えつつ、抱っこより今日は歩くことを選んだしとりと手を繋いで斎藤一を追う。
それにしても替えの刀を失った斎藤一はこれからどうするのだろう。そう悩んだ瞬間、また懐に仕舞っていた核鉄が熱を帯び、鼓動を始める。
シリアルナンバー「XX」は火渡の使う核鉄だけど。
やっぱり、何かと呼応している?