「ちゃんと見ておけ、阿呆が」
「悪いな、斎藤」
「斎藤、大事無いでござるか?」
「嗚呼、湯治で癒えはしている。だが、俺の牙突に耐え得る刀が北海道にはない。アイヌの剣も試してみたが、しっくりと来るものはなかった」
なんだか大変な事になっているけど。
三人とも私を取り囲んだまま話さなくても良いのでは?と思いつつ、ゆっくりと三人の間を抜けようとしたらお腹に腕を回され、俵担ぎのように左之助さんの肩に私は移動していた。
逃げることは出来ないんですね。しとりに助けを求めようとしたら剣路君と薫さんと仲良くカステラを食べているところを目撃する。
ペチペチと左之助さんの頭を軽く叩いて「私もあっちに行きたいです」と向こうを指差す。だが、左之助さんは「お前は今日も話があるからダメだ」と言われる。
もう、身体が持ちません…!
「緋村は覚えているかは知らんが、出海のヤツを糸色は知っている様だぞ」
「いずみ?陸奥出海殿でござるか!?」
「……なあ、景。北海道に来てからオレはお前の昔の男を知る事が増えた気がするんだが?」
「浮気なんてしてませんよ!?そ、それに陸奥さんは姿お兄様が知り合いというだけで、私は話したことはないですよ?!」
パタパタと手足を動かして左之助さんの誤解を解きつつ、私は斎藤一が小さな声で「すがた?」と呟いたのを聞き逃してはいませんよ。
「……まあ、後で問い詰めるとして。斎藤、景の兄貴が北海道にいるみてえなんだ」
「どんな格好だ」
「あっ、冊子の後ろにあります」
そう言うと斎藤一は無造作に「黒歴史ノート」を捲っていき、私は心身共に酷いダメージを受けつつ、ピタリと動きを止めた斎藤一を左之助さんの肩から見つめる。
「……やはりな、俺の左腕の骨を折った凍座白也の傍に居た男だ。武蔵坊の如く大量の刀や薙刀、槍、斧を籠に詰め込んだ変な男だったが、どういうヤツだ?」
「既に左之助さんと緋村さんには話していますが、姿お兄様は冒険家を自称し、世界各地を放浪する探検家であり、剣術家です。武具はおそらく趣味です、姿お兄様は想い出やお土産になりそうな物は手当たり次第に集めるところがありますから」
「俺の砕けた刀は土産扱いか」
「ヒッ!?」
突如、斎藤一から凄まじい圧力を感じてしまい、思わず悲鳴を上げ、身体を守るように抱き付く。肩担ぎにされているから意味はないけど。
怖さは紛れるので、やっぱり怖いけど。
「斎藤、抑えるでござる」
「落ち着け、景。斎藤は怖いヤツだが、女子供を殴る様な男じゃねえだろ?まあ、お前の兄貴が勝手に刀を土産にしたのはダメだと思うけどよ」
「ご、ごめんなさぁい」
「阿呆が。お前が謝ってどうする。兎に角、先ずは剣客兵器と戦うために刀が必要だな」
「そ、それなら、これを……」
「……なんだこれは?」
「核鉄。成る程、確かに斎藤ならば使える!」
こ、これで許してもらえるかなあ……。