私は無関係の筈なのに、左之助さんと一緒に函館の山麓北東部にやって来ている。斎藤一は核鉄を訝しげに眺めたり、日に翳したり、怪しいものを見るように、じっくりと観察している。
まあ、怪しいものなのは事実ですけど。
「緋村、お前の話を信じるとコイツは闘争本能に呼応して形状を変える超常の合金なのだろうが。まだ幸運の壺を売る阿呆共の方がマシだぞ」
「しかし、斎藤も孤島で見たでござろう」
「……嗚呼、あのガラクタか。糸色、お前の物だろう、試しに使って見せろ」
「私は使えません」
「斎藤、景に戦うなんて意志があると思うか?」
そうですそうです。
斎藤一も五年ぶりに会ったのに、私の性格を忘れてしまったんですか?と聞けば「お前は危険人物以外の何者でもない」と言われた。
私はただの物書きなんですよ?
「景、おぶるぞ」
「ああ、ありがとうございます。でも、もう左之助さんにはしとりを抱っこして貰っていますから、少しでもがんばります!」
そう言って私はフンスと力瘤を作る。
しかし、左之助さんに「オレ以外に見せんなって」と怒られてしまった。斎藤一も緋村剣心も世帯者ですし、そんなことを気にする必要はないのでは?
「……阿呆が。緋村、お前が見せろ」
「おろぉ……拙者でござるか」
渋々と緋村剣心は誰も警戒することなく懐に隠していた核鉄を取り出す。シリアルナンバー「
「武装錬金」
その掛け声と共に現れたのは日本刀……だけど。その刀身は本来の刃筋は当然の如く、峰の部分も鍔や柄頭も全て刃物のように鋭い「兎に角、お前を殺す」という意志が滲み出た恐ろしい形状をしている。
「ホウ、剥き出しの殺意か。お前の奥底にまだ人斬り抜刀斎が残っている事には驚いたが、随分とひた隠しにしているみたいだな」
「ひえっ」
「すげえ刀だな。まあ、幕末を生きてた剣心がこんな刀を出せるんだ。斎藤も似たようなものが出せるんじゃねえのか?」
「お前は俺を何だと思ってるんだ?」
「人妻を睨んでビビらせたヤツ」
「…………そんな事実はない」
あのときは怖がってしまいましたけど。今はもう顔の怖くて怪しい警察官としか思っていませんし。いや、本当に怖がっているわけでは……ウソです、本当はまだ斎藤一のことは怖かったりします。
「まあ、拙者が刀なのだ。お主も刀でござるよ」
「フン、違ったら返すだけだ」
そう言うと斎藤一は核鉄を服の中に仕舞い、私は五年間の生活を支えてくれた核鉄がこれからは斎藤一を支えてくれると信じるばかりです。