「(また、私も呼び出された…)」
五稜郭の露天牢の近くにやって来た私達を嬉々として出迎える凍座白也の視線を遮るように左之助さんの傍に寄り、視線の外側に逃げる。
あの人と関わる度に私の秘密と黒歴史を掘り下げる事になりそうで凄い嫌です。すでに「黒歴史ノート」は斎藤一に没収されて、何人に見られたのかも分からない状況なのも全て彼の仕業なのだ。
許せないけど。怖いので前には出ません。
「尋問は事前にも伝えたが儂と緋村抜刀斎が仕合っている間のみ。闘っている間ならば好きなように質問して良いぞ!」
「気は進まぬが致し方無いでござるな」
掛け橋を渡って露天牢に入った緋村剣心。
「張、刀を貸してやれ」
「否、儂の刀に問題ない!」
そう言って凍座白也は沢下条張の刀を断り、彼が空に向かって右手を突き出したその時、一振りの刀が彼に向かって投げ渡された。
「……姿、お兄様?」
其処に居るのは凍座白也と似た着物を羽織り、対面側の柵に背中を預けて座っている私の実兄が、この北海道に居ると確信していた糸色姿が私の事を見つめているのが見えた。
「やあ、久しぶりだね。随分と大きくなった様にも見えるけど。今は僕よりも白也と緋村抜刀斎の勝負を見守る事をお勧めするよ」
その言葉を言い終えた瞬間、凍座白也が刀を引き抜き、緋村剣心に斬りかかった。速い、けど。緋村剣心のほうが速い…!
「尋問だ。お前の言う本拠地は何処にある!」
緋村剣心を相手に片手で刀を振るい、斬り結ぶ凍座白也の圧倒的な膂力に押され、緋村剣心が真後ろに弾け、堀の水面を蹴って露天牢の囲に逆刃刀を突き立て、水面に落ちることを防ぐ。
「山中の何処かと言っておこう!我が友に同じ質問しても良いが、答えは同じだ!しかし、解せんぞ、抜刀斎。いつまでお主の『闘姿』を見せぬつもりだ?」
「その闘姿とは剣客兵器の特性でござるか?」
「違う。この闘姿は儂固有、若い頃に日本諸国を巡って毎日毎時武者修行に明け暮れていたときに目覚めた相手の闘うときに見える姿の事だ。後ろの我が友は当然の如く、お主らの闘姿も見えている」
「景、有り得るのか?」
「……可能性で言えばあり得ます。時として研ぎ澄まされた感覚は人智を越える現象を起こし、彼の話す『闘姿』を視認できる様にもなります」
おそらく一種の共感覚でしょうね。
音に色彩や形を与えたり、物を触ったときに構造を瞬時に読み取るなど前世でも実例は多く居ましたし。ただ、凍座白也の『闘姿』は共感覚とは別次元の話に思える程に狂気を宿している。
「尋問を続ける」
「白也、死なないように気を付けなよ」
「うむ!」
姿お兄様の声援に笑う凍座白也を見つめる。
一体、何が姿お兄様を向こう側に?