「相楽、糸色を借りるぞ」
「へ?」
「怪我させんなよ。景も気を付けてな」
「え?」
いつもなら助けてくれる筈の左之助さんは改めて悠久山和尚や本条さんにしとりを紹介していた私を斎藤一に着いていく事を許し、私は襟首を掴まれて戸惑いながらも別室に連れて行かれてしまった。
永倉新八と鷲塚慶一郎の立つ部屋に入った瞬間、のっそりと私より遥かに大きくて力じゃ絶対に敵わない三人が私を見下ろしている。
「あ、う、ひぃん…」
「ああ、泣くな泣くな。あのおじさん達の顔が怖かったんだな、おじさんは怖くないぞ~っ」
「相楽殿、申し訳ない……」
「阿呆が。ふざけている暇は無い」
そう言うと私に金平糖を差し出す永倉新八に肩を叩かれ、北海道の地図を敷いた机に私を誘導する斎藤一と、後ろで申し訳なさそうにしている鷲塚慶一郎に促されて机の近くにあった椅子に腰掛ける。
「糸色、コイツはどういうことだ」
そう言うと斎藤一は取り出した核鉄で武装錬金を起動した瞬間、彼の左腕を包み込む筒籠手が現れ、太刀に近い形状の長刀が彼の手に具現化する。
なにが、可笑しいのだろうか?
「このままでは分からんか」
ゆっくりと牙突の構えを取ったその時、日本刀は当然の如く斎藤一の左腕にも浅葱色の淡い光が浮かび、その刀身が重複するように揺らめき、幻惑を生み出す。
「狙う鋒は一つで良いのに、コイツは不要な幻影を二重、三重、重ねるように現れる」
斎藤一の牙突は「左片手一本平突き」と呼ばれ、前世でも有名な技として大河ドラマや映画、小説、漫画に至るまで最も有名な突き技だけど。
ふと揺らぎの長さに違和感を感じる。
まさか、有り得るのだろうか。
「斎藤さん、動かずに椅子を突いて下さい」
「……何か分かるなら試してやろう」
私は座っていた椅子を立ち上がり、永倉新八と鷲塚慶一郎を連れて壁の端に寄り、斎藤一の突きを見つめる。うん、その距離は絶対に届くわよね。
「では、動かずに此方を突いて下さい」
「……動かずに届くと思っているのか?」
私の移動させた椅子を訝しげに見つめ、私に言われるがままに左片手一本平突きを放った瞬間、彼の繰り出した刀身は真っ直ぐに椅子の背凭れを突き貫いた。
「やっぱり、斎藤さんの武装錬金は
「えーっと、つまり?」
「斎藤殿の『悪即斬』の精神の通り、全ての物を貫く無制限に伸びる刀身ということか?」
「その通りです。近距離、中距離、遠距離、斎藤さんに貫けないものは皆無と言えます」
なんだか前世で読んだ白髪細目の死神を思い出す武装錬金ですけど。しかし、彼方より圧倒的に殺意を感じるのは何故でしょうか?