小樽にやって来ました。
アの三馬鹿こと井上君達も居ます。
彼らの目的は金銭を稼ぐことであり、出来る限りの危ないことに巻き込まないように左之助さんも緋村剣心も心掛けているけれど。
やはり長谷川君の持つ、未だに抜ける気配の無い刀と亀仙流の様に背負った亀甲が気になる。
まあ、御宝ではあるとは思うけど。
今それよりも気になるのは雅桐倫具……いや、武田観柳である。彼の作った鈍刀は小樽に広まっているだけでなく、雅桐倫具には妖怪が味方についているという何だか不思議な噂も流れている。
「景、危ないから腕に抱き着いとけ」
「はい」
しとりを右片手で抱き上げる左之助さんの左手を握り、歩きを邪魔しないように身体を近づけながら一緒に歩いていると背中に視線を感じる。
井上君と久保田さん、長谷川君だろう。
「おしどり夫婦って言うんだっけ?」
「シャチョーの趣味なんだろ」
「明日郞、それだと社長が変態みたいに聞こえるよ。旭の言う通り、おしどり夫婦でいいんだよ」
「私も景ちゃんさんみたいに結婚するなら社長が良いわね。そうしたら、ずっと私はキラキラしたものに囲まれて生活できるもの!!」
後ろで聴こえる言葉に苦笑する左之助さんと緋村剣心だったが、緋村剣心が人と肩をぶつけた瞬間、相手は刀を引き抜き───いや、民衆の全員が刀を抜いて、私達の事を取り囲んでいた。
「子供に」
あっ、これは危ないですね。
「刃物を向けんじゃねえッ!!」
その言葉と共に放たれたパンチは刀を殴り砕き、一番最初に緋村剣心とぶつかった男の人を殴り倒してしまった。鈍刀なのは知っていたけど。
ゆっくりと砕けた刀身を拾う。
「(本当に芯が無いわね。武田さんが急拵えで生産しているとは思えない品質、彼ならもっと粗悪品でも良いものを売る筈なのに……)」
「景、どうかしたのか?」
「糸色殿、大丈夫でござるか」
「…ああ、いえ、少し考え事を」
「「また、何か企んでるのか?」」
まるで、私が何かを企んだことがあるような言葉を二人は言うだけど。
余計な事を言って、大変な事になるのは避けたい。それに、斎藤一に核鉄を渡してから、なんだか身体が気だるくて重く以前よりも息が切れやすいから、余り疲れることはしたくないのです。
「警官達が来たぞ、シャチョー」
「ちょうど良いな。剣心」
「そうでござるな。小樽の事情を知るには小樽の現状に詳しい人が適任、糸色殿も民衆の熱気に当てられた様子、少し休める場所が必要でござろう」
私の肩を抱いて、抱き寄せた左之助さんはそのまま腰からお尻に向かって手を動かし、ゆっくりと私の事をしとりと同じように抱き上げる。
ありがとうございます、左之助さん。