雅桐倫具の売り捌く雅桐刀と樺戸集治監の脱獄囚人が素性を隠して潜伏し、強盗窃盗に加えて喧嘩も連日連夜起こっているそうだ。
「西部のアウトローと同じだな。まあ、アイツらは誇りを懸けた勝負事に楽しさを見出だしてる分、ここの奴らよりマシかも知れないが…」
左之助さんはバンズ君達の事を思い出しているんだろうと思いつつ、私は緋村剣心と一緒に砕けた雅桐刀の刀身の中を見る。
やっぱり芯になる鋼が無い。
こんな粗悪品なら加減していたとはいえ左之助さんのパンチで砕けるのは当然だけど。武田観柳が売るとは思えないほどに品質も悪い。
「糸色殿、どう見るでござる」
「西洋剣の鋳造ですね。数を造る場合、溶かした鉄を型に流し込めば簡単に仕上げる事は出来ますし、売るためなら鍛造の工程は省けます」
「剣の作り方で刀を造るか…」
「剣客兵器の実検戦闘じゃねえだろうな」
しとりを胡座を掻いた膝の上に乗せたまま話す左之助さんはお結びを食べようとする度、しとりに手を引かれてお結びを逆に食べられている。
かわいい。
「左之、アの三馬鹿はニシン漁に行くとか言ってたが雅桐関連の話を得るかも知れぬ。糸色殿もそろそろ休むでござるよ」
「景、宿舎に行くぞ。剣心、送ったら戻ってくるから待っててくれ」
「承知したでござるよ」
「ん!いこ!」
「…えっ、ああ、はい、そうします」
緋村剣心に促され、左之助さんにも心配されながら駅逓所の宿舎に向かう。しとりを抱っこしようとして、いつもより身体が重く感じる。
ここ数年は体調不良を起こすなんて無かったのに、身体がどこかおかしくなっているのは間違いないんだろうけれど。その原因が分からない。
「母ちゃん、いたいの?」
「……フフ、平気ですよぉ?」
うん、まだ大丈夫なはず。
宿舎の一室に入った瞬間、いきなり私の頭や身体を触って確かめる左之助さんに驚きつつ、彼の事を見つめると「どこか悪いなら言ってくれ」と頼まれ、彼の優しさと愛されている事を再確認できて嬉しくなる。
「無理してねえか?」
「大丈夫。私は生きてますよ、左之助さん」
確かに身体は不調ですけど。
そこまで心配するようなことじゃないですし。休めば良くなりますから、しとりと左之助さんを置いていくわけないじゃないですか。
「あの、左之助さん、流石に恥ずかしいです」
じーーーっと私達を見つめるしとりの眼差しに気恥ずかしさを感じて、私を抱き締める左之助さんの背中を叩いて離してほしいと伝える。
でも左之助さんは離してくれなくて、気が付けばしとりも私に抱き着いて一緒に布団に向かって、一緒に倒れ込んでしまった。
全く、仕方ないですね。