「あの、恥ずかしいんですけど」
「いつもしてるだろ」
左之助さんは私をお姫様抱っこし、しとりを肩車したまま市内を歩いて雅桐倫具の調査を進めつつ、実検戦闘を起こそうとしている剣客兵器の調査も進めている。
ただ、チラチラと私を見つめる視線に耐えるほど私は心が強いという訳じゃないんですけど。そう左之助さんの頬っぺたをツンツンと押して訴える。
そんなことを五分ほど続けていると左之助さんはピタリと歩みを止め、にっこりと微笑んで私の耳元に顔を寄せて、しとりや他の人に聞こえない声で「いい加減にしねえと裏路地に連れ込むぞ」と呟いた。
「どうする?」
「や、やめます」
余りの艶やかな声に心臓がドキドキして、私は真っ赤になっているであろう顔を両手で覆って隠す。こ、こんなところで何て事を言うんですか。
チラリと緋村剣心を見ると苦笑していた。
聞こえてる、聞こえてるじゃないですか!
「ん!あらん!」
「え?ああ、井上君達ですね」
「しっかり働いてるな。ヘトヘトになってねえのは旭だけなのは地力の差かね」
「いや、それもあるが旭の動きは無駄が少ないゆえに二人と違って身体に負担を掛けていないのでござろう。しかし、何処もかしこも雅桐刀ばかりでござるな」
そう言うと緋村剣心は逆刃刀の柄に手を置き、ウンウンと唸っている。私が教えても良いけれど、そんなことをすれば井上君達の活躍が無くなり、武田観柳の生死に関わるかも知れない。
「さて、どうしたものか」
「やはり役人殿の言った通り、港近くで張り込むべきでござるか。だが、そう易々と捕まるのは思えぬが……左之、少し下がるでござる」
ピタリと動きを止めた緋村剣心の目の前に立つ袖無しの胴着と括り袴を履き、後ろ腰に刀を佩いた男が子供を連れて立っていた。
「久し振りでござるな。陸奥、出海殿」
「……ああ、飛天の坊主か!」
やっぱり「修羅の刻」風雲幕末編の主人公を務めた坂本龍馬、土方歳三、沖田総司、あの三人の剣豪と闘って勝利した陸奥一族でも屈指の実力者だ。
「その子は出海殿の子にござるか?」
「嗚呼、俺の子の天兵だ」
「景の冊子に書かれてたヤツか」
「いえ、それは別の人です」
そう言うと左之助さんの圧が強まる。
い、今の私は弱っているので酷いことはしないですよね?と不安になりながら、さっきから静かになっているしとりに視線を向けると、少し顔を赤らめて天兵と呼ばれた男の子を見つめている。
あらあら、剣路君に好かれている事にも気づいていなかったしとりが顔をリンゴみたいに赤くして。フフ、初恋になっちゃうのかしら?