陸奥出海といえば彼の弟の陸奥雷はインディアンとして活躍し、西部開拓を進める白人と戦って戦死した……というのが原作での流れだけれど。
赤報隊としての矜持を持つ左之助さんやバンズ君達、GBW参加者の連合も交えて騎兵隊の撃退に加わったため、陸奥雷は辛うじて生きてはいる。
私達のご都合的な気持ちで「修羅の刻」の正史を歪めるのはダメだと分かっている。しかし、彼の死は1877年であり、既に明治十六年(西暦1883年)を過ぎても存命しているのだから歴史の抑止力や変異は起こっていない。
「出海殿は観光でござるか?」
「まあ、そんなところだが、随分と飛天の坊主は剣気が薄くなったな。昔のギラギラしていた威圧感が無くて分からなかった」
「それだけ平和と言うことでござるよ」
そう言って語らう二人の会話に混ざるべきかと悩んでいる左之助さんに「雷君の事を話してみたら?」と助言を伝えつつ、私は恥ずかしそうに俯くしとりと天兵君のやり取りを眺める。
「しとり、話しする?」
「ん、ん!」
コクコクと頷いて天兵君の隣に座るしとりに左之助さんの視線が向かう。剣路君のときもそうだったけど、左之助さんって子煩悩なのかしら?
「左之、まだ子供でござるよ」
「景の子供だぞ」
「おろぉ……」
「鉢巻きと嬢ちゃんの子供か。ウチの天兵も年下の友達が出来て嬉しそうだ」
「相楽左之助だ。一応、アンタの弟と
「雷のヤツ、
楽しそうに笑った陸奥出海は「向こうには強いヤツがいっぱいいるんだろうな」と呟き、どこか悲しげに海を見つめる。……きっと、彼は坂本龍馬との約束を思い出しているのだろう。
「出海殿、雅桐というものを見つけたら拙者達に教えて欲しいでござる。左之、糸色殿、そろそろ調査に戻るでござるよ」
「しとり、行きましょうか」
「ん。またね、てんちゃん」
「またなー、しとり」
ヒラヒラと手を振るしとりと天兵君の間に割って入りそうな左之助さんに「初恋かも知れないんですから、そっと見守りましょう」と告げる。
「しとりは嫁には出さん」
「おろ、頑固親父でござるか?」
「私は健やかに育ってくれれば幸せです。それに誰と結ばれたりと想うのは、しとりだけの特権ですから私達は温かく見守るのがベストなんです」
「べすと?」
「……コホン。ちょうど良いんです」
緋村剣心にも分かるように言い直すものの左之助さんは「しとりは父ちゃんと一緒だもんな?」と肩車している彼女に何度も聞いて、ペチペチと鬱陶しそうに頭を叩かれてしまっている。