「糸色景、久しぶりですねぇ!」
「お久し振りです、武田さん」
なぜか怒気を感じる彼の挨拶にビックリしながらも頭を下げ、ゆっくりと武田観柳と挨拶を交わす。五年ぶりに会いますけど、余り変わっていないようで何だか逆に安心してしまった。
……しかし、本当に河童がいますね。
「で、貴女は何のようです?もう緋村抜刀斎や其処の喧嘩屋には知っていることを全て話しましたよ、もう何も語ることはない!」
「えっと、用件は河童に会うことです」
「……わしかあ?」
のっそりと胡瓜の山を跨いで現れた緑色の身体と頭頂部の皿、背中の甲羅も合わさって見事に河童と分かる見た目だけど。
彼は「うしおととら」に登場する河童より大きく、良質な筋肉の鍛え上げられた武人の様に引き締まったムキムキでゴリゴリマッチョな河童だった。
うん、これでも河童ですね。
「左之助さん、正しく河童ですね」
「だろ?」
シュムナやオヤウカイなんていう
この言葉はアイヌ語で「その身は魔なり」に近く水の精霊や水神の付き人を務める河童とは似て非なる存在であり、下手に関われば大変な事になる。
「河童さん、お味噌を持ってきました」
「おお、ご丁寧に。じゃが、わしを訪ねてきたのはどういえことだあ?」
「はい。刀傷や裂傷、打撲に効く河童の塗り薬をお譲りして貰いたいんです。左之助さん、ウチの主人は近々危ないことに巻き込まれる可能性があるので」
「よかぞお。代わりに味噌をくれ」
そう言って私は赤味噌と白味噌を詰めた壺を河童に差し出す。「うしおととら」にも登場する河童の塗り薬を持っておけば左之助さん達が怪我したときに使える。
「聞いたか、ウチの主人だってよ」
「えぇい、張り付くな!」
嬉しそうに武田観柳に話す左之助さんの態度に首を傾げる。いつも言っていると思うけど、やっぱり主人や旦那様、貴方って呼んだ方が喜ぶのかしら?
「ほら、塗り薬だあ」
「ありがとうございます」
小さな壺を受け取る。
「武田さん、一つ聞いても良いですか?」
「何かね、糸色景!」
「どうして、河童と仲良くしているのに河童の塗り薬で製薬会社を作ろうとは思わなかったんですか?前の貴方ならしていましたよね?」
「フン。一応、彼は私達の命の恩人ですからね。しっかりと恩も返さぬ内に扱き使うなんて出来るわけないでしょう!!」
命の恩人とは、どういうことだろう?