「まず、相楽ニシパは着いてこないでね」
「は?殴るぞテメェ」
「アタシの方が歳上だぞ、ウニ頭が」
「左之助さん、落ち着いて。ススハムさん、どうして私だけで着いていかないといけないのか。ちゃんと教えてもらえますか?」
ススハムの言葉に怒る左之助さんを落ち着かせて、どうして私だけを呼ぶのかを彼女に問い掛けるとヘアバンド越しに額を軽く握り拳で叩き、溜め息を溢す。
「サンピタラカムイ、わかる?」
「無理です!」
湖の守り神になるとか絶対に無理です!と素直にススハムの言葉に答える。しかし、彼女は「神酒を少し貰うだけだからセーフだ」と言い、私の手を握った。
……どうやら本当に私の身体は危ない状態らしく彼女の真剣な眼差しとドクトル・バタフライが彼女達を選んだ理由も直ぐに分かってしまう。
左之助さんは私達の会話に戸惑いつつ、軍服の青年と離れたところに移動していく。彼はどの物語に生まれ変わった転生者なのかも気になるけど。
「ススハムさん私の身体は神酒に耐えられる程強くはありません。動けば直ぐに倒れるひ弱な身体で、今も胸に痛みを患っています。それでもですか?」
「だから行くんだよ、相楽カッケマッ」
「…………」
どれだけ否定しようとススハムは私の言葉を肯定し、サンピタラカムイに会うために神居古潭に行くべきだと告げる。私も左之助さんとしとりと一緒に居るためには、必要な事だと分かっているけど。
怖いものは怖い。
「相楽ニシパ、信二と一緒に居てくれ」
「えっ、置いてけぼり?」
「お前は剣客兵器の相手してろ」
そう言って私のことを徐に抱き上げるススハムに驚いたその時、私の視界はハイスピードカメラの様に動く光景に染まり、音が聴こえなくなる。
走っている。
そう、ススハムが走っているのだ。
「アタシの役目はアンタを生き永らえさせて、ドクトル・バタフライの目指すハッピーエンドを見ることだからアンタに死なれると困るのよ」
「でも、オバケは怖いですし、オヤウカムイと戦えなんて言われたら泣いてしまいますよ?」
「アイツならアタシが蹴り倒す」
自信満々に告げる彼女の力強い言葉に思わず感心しながら木々を飛び移り、小樽の全貌が見える高さに舞うススハムの姿が何かと重なる。
「……あそこに左之助さん達が……」
「相楽ニシパの事、本当に好きね。バタフライに聞いたときは逆ハーレムを狙ってる悪女かと思ったんだけど。アンタはあれね、無自覚系主人公っぽいわ」
それは、褒め言葉なのでしょうか?