「サンピタラカムイ、出てきてくれ」
「何用か、ススハムよ」
洞爺湖。
未来ではオヤウカムイが暴れ狂う場所にやって来た私はススハムの呼び掛けに応えて現れた朧気に見える巨大な人、北海道の土地神様サンピタラカムイを見上げ、余りの大きさに唖然としてしまう。
「この女に神酒を分けてくれ。今後とも湖の守り神を続けるために必要になるとドクトル・バタフライが話していたから、多分、渡しても大丈夫な筈だ」
「……ふむ、余計な物を宿しておるな。ススハムの言うことが事実であろうと、この者に神酒を与えたところでそれが却って苦しめる結果になるやも知れぬぞ」
「御託は良い。くれ」
徳利に注がれた神酒を受け取るススハムを眺めつつ、私は「うしおととら」に登場する本物のサンピタラカムイ様に会えたことに歓喜していた。
原作より大きく感じるけど。
そういう風に見えるだけで本来のサイズはもっと大きいのかも知れない。───けど、本当に大好きな人達に出会えるのは嬉しいことであり、とても幸せな事なんだと私は思う。
「相楽カッケマッ、飲みなさい」
「……お、お酒は得意じゃ……」
「往生際が悪いわね!?」
「んん゛ッ…んくっ…」
ススハムに無理やり口に徳利を押しつけられ、コクリと一口だけ神酒を飲んでしまう。でも、身体に目立った変化や違和感は感じず、小首を傾げる私にススハムは「ここまで走ってみなさい」と言い、瞬間移動したような動きで100mほど離れた場所に移動した。
あんなところまで走るの……?
「よ、よし、がんばれ!」
そう意気込んで走り出す。
しかし、五秒と経たずに私の息は絶え絶えに変わり、ふらつきながら、フラフラと身体を動かして、なんとかススハムのところまで走り抜ける……つもりだったけど、そんな理想はあり得ない。
それでも20mも走れました。
「ねえ、神酒を飲んでこれなの?」
「ケヒュッ、ゴホッ…ケホッ!」
「……流石に神酒をがぶ飲みさせるのはアレね。サンピタラカムイ、彼女の身体は回復してる?」
「しばしの延命は出来るだろうが、心臓に負担を掛ける動きは控えることだ。お主がその身に宿す異能は儂ではどうにも出来ぬほどに魂と絡み合い、引き剥がすことは無理じゃろう」
そう言ってサンピタラカムイは消えてしまった。最初からそこにいなかったかのような神様に戸惑いながらもススハムを見上げる。
「一応、長生きできるみたいよ」
神様はウソを言わない。
暫しの延命はおそらく1年にも満たないものだろうけど。少しだけ、ほんの少しだけ身体の痛みと辛さが無くなったのは嬉しいことです。