剣客兵器のアジトを目指すために雅桐倫具の隠れ家の戸を開けた瞬間、髪の毛を剃り上げた筋肉質の大柄な男の人が佇んでいた。
「糸色景、我々と来て貰おう」
「ドイツもコイツも人妻を狙ってんじゃねえ!」
「……相楽左之助、か…」
「テメェら先に行っとけ」
そう言うと同時に強烈な前蹴りを放ち、男の人を蹴り退かした左之助さんが緋村剣心達に視線を送った瞬間、いきなり井上君と長谷川君が私の事を担ぎ上げ、しとりを抱えた武田観柳が全力で走り出す。
「えっ!?さ、左之助さん!?」
「やむを得ぬ事態ですが、逃げるが勝ち!!」
「かち!」
騒々しく獣道を駆け降りる井上君達に運ばれながら左之助さんのいる山小屋を見た瞬間、河童と巨大な熊が身体を密着させ、組んでいる光景が見えた。
熊を手懐けるなんて記憶にはない。
私を助けるためにやって来てくれた筈のススハムと軍服の青年は何処に行ったのかと不安を抱きつつ、左之助さんの無事を祈ることしか私には出来ない。
「観柳、糸色殿達と行くでござる!」
「えぇいっ、命令するな!」
そう言っているものの武田観柳はしっかりとしとりの事を抱き締めて、落とさないように大事に守ってくれている。私は御輿のように担がれたまま獣道を飛び出て、小樽の町へと行き先を変える二人に成す術もなく連れていかれるだけです。
「行き先変更、私の紋を取り返しに行きますよ!あとで報酬はたっぷりと払いましょう!!」
「え?」
「「乗った!!」」
突然の言葉に驚く私を担いだまま走る井上君と長谷川君の提案に乗る声に更に驚きつつ、私としとりは何処かに隠れるという選択を選ぶこと無く剣客兵器のアジトに向かうことになってしまった。
「ごー!」
「GOじゃありませんよしとり!?」
武田観柳の左之助さんより高い視界にワクワクしているしとりに煽らないように言っても楽しそうに笑い、剣客兵器のアジトがあるであろう小樽の河川へと走る三人を止めることは出来ない。
「糸色さん、貴女にも頼みますよ!」
「わ、私もですか?」
「えぇ、貴女はいるだけで役立つ!」
その言葉の意味は容易に予想できる。
武田観柳は陽動や誘導、囮役として私の事を利用するつもりなのだろうけど。私は武田観柳に「しとりもいるのに危ないことが出来るわけないでしょう?!」と苦言を言い放つ。
「ノープロブレム!私の作戦に抜かり無し!」
全く信用できないんですが、それ。
これから始まる大変な陽動作戦に対して不安と恐怖、しとりが怪我をする光景を想像してしまい、私の不安は募っていく。